「瞳を翳らすものへの怒り」二十四の瞳 デジタルリマスター版 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
瞳を翳らすものへの怒り
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Blu-ray(デジタルリマスター2007)で2回目の鑑賞。
原作(角川文庫版)は既読。
冒頭から中盤で描かれる大石先生(高峰秀子)と子供たちの交流が心暖まるものだからこそ、その後に待ち受ける経済不況や戦争の齎す悲劇に胸が締めつけられた。
暗い時代の波は小豆島にも押し寄せ、教え子たちも容赦無く飲み込まれてしまう。その理不尽さたるや無い。子供たちの歌う平和な唱歌が軍歌に置き変わっていく。
貧困のために学校に来ることもままならず、家の手伝いのために勉強も出来ない。子供たちを取り巻く状況に、歯痒さを噛み締める大石先生の表情に胸が痛くなった。
キラキラとした美しさを湛え、希望に満ち溢れていた瞳が次第に翳っていき、戦争によって無惨に踏みにじられてしまう彼ら彼女らの命に、悲しみの涙が止まらない。
戦争への怒りを市井の目線を通して痛切に訴え、瀬戸内の素晴らしい風景と共に叙情的に描くことで、普遍的な暮らしが破壊されてしまう理不尽を浮かび上がらせた名作である。
こんなことが二度と繰り返されてはならない。何よりもあってはならないのは子供から希望を奪い去る世の中をつくってしまうこと。それを防ぐのが大人の役目であると痛感した。
[以降の鑑賞記録]
2025/01/26:Blu-ray(デジタルリマスター2007)
※修正(2025/01/26)
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