「この世を支配する存在」インターステラー サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
この世を支配する存在
時間を掌握し、変幻自在思うがままに操る男・クリストファー・ノーラン。5次元という過去最大規模の壮大なテーマを掲げた本作は、これまででいちばんノーランらしい設定ながらに、ノーランらしかぬ展開とオチを迎える不思議な映画だった。
実は初鑑賞。今年は「オッペンハイマー」「メメント」「フォロウィング」が劇場公開&再上映してくれたため、個人的にはノーランイヤー。残すところあと数本となったわけだけど、最も有名といってもいいこの映画はこれまで見てこなかった。
IMAX再上映という最高の形での初鑑賞。迫力が他の映画とは段違い。慣れすぎて当たり前になってきてるけど、IMAXってこんなにもすごいものなのかと教えてくれる。劇場内に響き渡る轟音に全身が刺激される。まさに映画体験。いや、映画館体験と言った方がいいだろう。
閑散期の映画館が満席近く埋まっている。みんなが同じ映画に夢中になっているその様をを見るだけで、なぜか心が満たされる気持ちになる。洋画離れが進む今、ヒーロー映画やシリーズものでもなんでもない、ひとつの作品がこうして愛され、求められる状況に思わずワクワクしてしまう。
そういった映画館効果がデカすぎるがあまり、4点台にギリギリ乗ることができたけれども、正直家で見たらインパクトは半減。ストーリー自体があまり好みではなく、歴代のノーラン映画と比較するとどうしても物足りなさが勝ってしまう。
というのも、相対性理論等の物理学が用いられる映画ということを前々から知っていたため、それならしっかり予備知識として頭に入れて置いた方がいいだろうと鑑賞前に2時間近くかけて勉強したのだけど、さほど難しい物語ではなく、知識を得たことで理解しやすい箇所はあったものの、求めていたものとは結構かけ離れていた。
この監督、結構極端だなと思う部分があって、「TENET」はどう考えてもやり過ぎなぶっ飛びSFがために全然好きじゃないし、逆に本作のように家族愛に振り切りすぎるのもちょっと陳腐な感じがしてイマイチ乗れない。
いやもちろん、本作は家族愛以外のパートも面白いし、それが上手くいかされたメッセージも持っているから深みのある映画ではあるんだけど、どうもオチがしょうもなくて、こんだけ大規模な映画なのにやること幼稚だなぁと思わざるを得ない。そう考えると「インセプション」って究極のバランスで成り立っている傑作だなとつくづく感じさせる。言いたいことはわかるけど、ここまでしなくていい。世間の評価を気にしすぎ。もっと自分らしくやっていいのに。
そこに収まるのかぁというガッカリ感はあったものの、ブラックホールや5次元に対する見方は非常に面白く、もっと説教臭くだらだらと専門用語を並べるようないつものノーランおじさんぽい映画でも良かったんじゃないかなと思った。
「プレステージ」等の初期作と「ダークナイト ライジング」「ダンケルク」はまだ未鑑賞だが、今のところのノーランベスト5は、
1.ダークナイト
2.インセプション
3.メメント
4.オッペンハイマー
5.バットマン ビギンズ
だね。多分揺るがない。再来年公開の新作はどうなるかな??