「愛する心は物理法則に則り可視化できるという話」インターステラー Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
愛する心は物理法則に則り可視化できるという話
感想
現在最新の気象学(地球気候変動)、植物遺伝学(遺伝子組み換えによる交配不良に伴う食料枯渇問題研究)、宇宙物理学、量子力学、宇宙論、ロボット工学(人工知能と人類の共存、運動制御分野、アクチュエータ機構分野等)、遺伝子工学(医療分野)の知識を余す処なく幅広く取り入れた設定の中で人類存亡の危機を未来の知性からの物理現象的援助を受けつつ人類の究極の選択肢(冷凍受精卵と極限られた人間の別天体移住)を考慮しながら困難の末に回避していく方法を見出して人類を救済し、更に宇宙での新たなる人類の移住先を発見しその星へ旅をしていく事に命を賭けた研究者達と一人の宇宙飛行士とその家族の話が壮大な時間軸と時空を経て展開していく本格的SF一大叙事詩的物語となっている。
相対性理論を基にした気の遠くなるような時間の流れの変化の中での信じる事の大切さを痛感させる人間模様。さらにブラックホール研究でも最重要視されている物語のキーワードとなっている重力の問題を取り上げており、重力の操作によりワームホール≒ブラックホールとホワイトホールの相関性を示唆した天体空間というより穴を人為的に出現させてその中を自由に行き来する事で遠距離の別天体に宇宙論における比較的にだが短時間で移動が可能となる話など途方もないスケールで話が展開していく。
人が人を愛する気持ちや祈念する心、親と子の絆など普段は可視化する事が出来ないものが実は物理的法則や定理として存在し、ブラックホール・ワームホール間の狭間では高次の大きな意思により意図的に時間と重力のみは次元を超越することが可能であるとして、その2つの定理を抽出し次元に加えることで間接的ではあるが三次元的に可視化され過去・未来のどの様な時でも関係性が存在した場所に時間的にも連続して繋がる事が可能となる。但しコミュニケーションとしては基礎的な伝達手段のみであり、伝達が成立するかは双方の意思疎通するという想いの強弱もあるのだろうが、この物語ではコミュニケーションを過去または未来の自分、又は関係性が深い人と言葉としては限られた規則性のある単純な信号に変換して伝達する事も可能であることが描かれる。ブラックホールからワームホールに至る間の狭間にはまさに過去、または未来に手を出す事の出来ない自由の利かない予定調和空間ではなく、過去と今の自分が対峙する事で制約付きではあるが自身の未来をも自分の手で変えることが可能な空間(次元)を自らの意思で創り上げる事が可能であり、さらにその空間(次元)は世界の未来を変える事も可能なのだという話に興奮し想像すると激しく心が揺さぶられ感動する。
監督のクリストファー・ノーランは科学的にも信憑性の高い諸理論を噛み砕き分かりやすく映像やストーリーの中に絶妙に反映させており、さらに物理的に遥かな距離に置かれた人と人の絆や愛と言った精神性の話を上手く融合させて起承転結のはっきりとした話を創りだした事にもの凄く感心した。
映画としてとにかく話の設定がよく出来ていて説得力が半端ない。その中で展開していく究極の状況に生きる人間の心理が詳細に描写されている。
配役も豪華メンバーである。
アカデミー賞受賞俳優であるマシュー・マコノヒーが主人公クーパーをストイックに演じている。
共演はアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ノーラン作品常連のマイケル・ケイン。「2010年」のジョン・リスゴーがクーパーの父親役を。またシークレットキャストとしてマット・デイモンがポイントとなる配役として出演している。また、クーパーの息子トムの子供時代を今やハリウッド若手トップ俳優となっているティモシー・シャラメがとても地味に演じている。また子供時代のマーフィーを演じたマッケンジー・フォイの健気な美しい透明感のある演技が涙を誘い印象に残る。
VFXはリアルな出来映えで秀逸。ステーションのモデルワークスも半端ない精密さで実際に構築されており、徹底したリアルさを追求した映像となっている。ハンス・ジマーのOSTも素晴らしい◎。アクションとしても申し分のないものになっており娯楽性も高く21世紀SF映画の名作と言ってよい。
2014.11初鑑賞以来鑑賞多数
IMAX 2020.9.16
⭐️5.0
コメントをご丁寧にありがとうございました。
moiさんのレビューは、非常に詳しくなるほどと思うばかりです。
私は、無意味なスプラッター以外は、ジャンル問わず観ます。
見た後に温かい気持ちになる映画がすきです。