「映像の魔術士ノーランの最高傑作」インターステラー かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
映像の魔術士ノーランの最高傑作
クリストファー・ノーラン原案監督。
脚本協力のジョナサン・ノーランは弟。
科学監修のキップ・ソーンは、映画公開の3年後に、「LIGO(レーザー干渉計重力波観測所)への貢献と重力波観測」でノーベル物理学賞に輝くという快挙も。
【ストーリー】
植物が枯死し生態系全体が死にゆく地球。
元宇宙飛行士のクーパー(マシュー・マコノヒー)は、自宅の、10歳の娘マーフの部屋で起こる説明のつかない異常な現象に悩まされていた。
学校では過去の歴史改変が行われ、アポロ計画すら無かったことにされており、科学に才能を見せていたマーフは周りと悶着を起こすようになっていた。
太陽光パネルを使った自動操縦のドローンが落ち、野球の試合は砂嵐で中止になり、作物の収穫は年々減少。
人類は疲弊し、諦観が空をふさぐ砂嵐のように社会を覆ってゆく。
だが、マーフが本棚から不規則に本が落下するのを、モールス信号に照らし合わせて意味を見いだしたのをヒントに、クーパーは一見無意味な砂の積もり方から数字を解読し、砂漠中央の政府施設にたどり着く。
そこは解体されたと発表されていたアメリカ航空宇宙局——NASAの極秘施設だった。
かつての宇宙計画の仲間たちと再会し、その施設の存在意義を問うクーパー。
計画責任者のブランド教授(マイケル・ケイン)は言う。
「これは、人類救済ミッションのための施設なんだ。クーパー、ぜひ君を我々の計画のパイロットとして迎えたい」
作戦名はラザロ計画。
それは人類の移住先を探す、深宇宙への旅。
悩んだ末にクーパーは彼らへの参加を決断する。
それが許せないマーフは、最後の瞬間までクーパーと顔を合わせないと強情を張る。
車が発進すると家を飛び出して追いかけ「行かないでパパ」と泣いて叫ぶが、その言葉はクーパーには届かなかった。
ミッションクルーはブランド教授の娘で物理学者のアメリア(アン・ハサウェイ)、ロミリー、そしてドイル。
計画は土星近傍のワームホールから始まり、別の銀河のブラックホール、ガルガンチュア周回軌道で行われる。
最初のミッションに選ばれた水惑星はブラックホールのすぐ外縁にあり、高重力による時空の歪みで時間の流れが遅い。
しぶるクーパーを説き伏せて往還機レインジャー号で水惑星に降りたつが、先遣の往還機は破壊され、高重力の潮汐力による超巨大津波が彼らにも迫っていた。
水惑星のデータを持ち帰ろうとするアメリアを汎用作業ロボットCASEが救いあげたが、ドイルが水流にさらわれてしまう。
たった数時間の作戦だったが、二人が母船エンデュランスにもどると、23年が過ぎていた。
悄然としながらも、クーパーは返事ができない間のビデオレターで、息子の結婚と父と初孫の死、そしてブランド教授の裏切りを知る。
重力場理論の第一人者ブランドは、ただ自己言及するだけの数式で皆を欺瞞し、地球を滅ぶに任せていたのだ。
物理学者として彼に従事したマーフ(エミリー・ブラント)はその式の無意味さを理解し、アメリアとクーパーもその片棒を担いでいたのだと、自分たちだけこの滅びゆく星から逃げたのだと映像の中で泣きながら責める。
ショックを受けたクーパーがアメリアに詰め寄ると、ラザロ計画には隠された別の目的があったとあかす。
それは凍結受精卵による、別天地での人類再生計画。
彼らは協議の末ラザロ計画の立案者、天才物理学者のワン(マット・デイモン)のいる氷の惑星に進路をとる。
ここでなら人類が移住しても大丈夫と自信満々の態度を見せたワンだが、それもまた大きなウソだった。
孤独に打ちのめされ、生存本能に狂ったワンは、クーパーを襲い、彼ら後発隊の全滅とエンデュランスの強奪を目論む——!
ぼくらのこだわり映画野郎ノーランが、現役物理学者キップ・ソーンの監修のもと創り上げた、最新のブラックホール理論に基づく時間SF。
光り輝く膠着円盤(土星の輪)と、重力レンズ効果で輪郭外縁部にあちら側の光を纏うダイナミックな超巨大ブラックホールの威容は、その後のブラックホールのイメージを一新してしまいました。
生フィルム大好きのノーランですから、なるべくCGを排除し、スクリーンに星々を映してセットやミニチュアでシーンを撮影、スターウォーズの宇宙船や戦艦をもしのぐ存在感のある航宙船の撮影に成功しています。
一番のハイライトは爆発して異常回転を始めたエンデュランスと、レインジャーⅡとのハイリスクなドッキングシーン。
あの背景もスクリーン投影したもので、注意して見るとノーランの演出意図が分かります。
CGじゃあの重量感は出せない。
さてSF面での考証も練られていて、相対性理論における時間速度の変動(ウラシマ効果)や、ワームホールが球形である理由の説明、なによりも膠着円盤を真横から見た超巨大ブラックホールのダイナミックさは、その後メディアのブラックホール像を、あらかたこのノーラン型にしてしまうほどのインパクト。
アメリアの言う愛は物理的に観測できるエネルギーっていうのは、みんな一度は考えたであろう、原子が電磁力で引きあい、惑星が重力で引きあうなら、人と人が惹かれあうのは性愛にとどまらない愛なのではという話ですね。
このあたりの階層構造は、手塚治虫の『火の鳥』なんかでも語られてます。
事象の地平線の中、4次元空間テセラクト内の不可思議さやクーパーによる過去のマーフへの涙を誘うメッセージ。
そして、人類を救うマーフの重力理論の完成。
まあ盛りだくさんです。
一応用語の解説などをしておきますと、「事象の地平線」とは重力が強すぎて、脱出速度が光速を超えちゃって真っ暗になる球面です。
その向こうはあらゆる物理的存在が脱出できない、未知の領域。
イベント・ホライズンと英語にすると、もいっちょテンション上がりますね、かっこいい!
ワームホールはブラックホールのちょっとひん曲がったやつとでも思っておいてください。
超重力で2点の空間をくっつけて、あっちとこっちを出入りできるようになってます。どこでもドア的便利さ。
ワームってあるし、穴の空いた絵本のはらぺこあおむしみたいなもんですうそです実は自分もよく分かってませんごめんなさい。
エルゴ球面とかペンローズ過程とかは、おりゃーってブラックホールに物ぶつけたらすんげーパワーで原子核まですり潰されてエネルギーに変わっちゃう、ぐらいの意味です、多分。
なぜ重力が時空を超越できるかというと、事象の地平線の内側にある「特異点」は相対論の公式に無限大が入っちゃうので、平常宇宙の因果自体が無意味化して、時間も空間と同様の存在になる、みたいな話だったかと。
この辺はまだまだなんの実証もされていない、いわゆる机上の空論(理論物理学)です。
なんとでも理屈がつく。
時空理論のスキマをつくのに便利なので、ブラックホールを使ったタイムマシンは、SFではメジャーなガジェットなんです。
まあ水爆作ったジョン・ホイーラーの弟子で、重力波の研究でノーベル物理学賞に輝いたキップ・ソーン物理学監修だから、質問すればこっちをケムに巻く気持ちのいいウソ(サイエンスなフィクション)を采配(sci-fi)してくれるはず!
説明丸投げで申し訳ないですが、専門家でもないのでご容赦ください。
マーフの重力理論がどう人類を救ったのか、そのあたりも詳しく描かれてないから、ちょっとわかりません。
でも彼女の名前がついた茶筒型スペースコロニーは、ガンダムでもスタンダードになっていたガジェットでしたし、ちょっと上がりました。うそですウヒョオオオ!ってなりました!
とにかく宇宙のクーパーと地球のマーフの冒険、そして彼らのロマンスの行く末までをダイナミックに描いた、ノーランらしいSF。
劇場でぬおーすごいと圧倒され、すぐにBlu-ray購入して、一気に2回見るほど気に入ってしまいました。
これを書き終えたら、また見ます。
角材組んだようなお供ロボのTARSとCASE、彼らがかわいくて欲しくなったあなたはもうインターステラリスト。今決めました。
自分のペンネームですが、実はとあるSF小説の主人公CASEから取ってます。
この映画のCASEも、そうだったらいいな。
そしたら1人じゃなくて、TARSとお膝抱えてならんで一緒にこの映画みる。
ユーモアレベルは、そうですね、60%で。
コメントありがとうございます!
解説とても勉強になりました🧐詳しいですね。
アメリアの愛を語るシーンはとても印象的でした。TARSのユーモアセンスもなかなかです!
マイベストムービー共感嬉しいです、ありがとうございます 自分もBlu-ray買いました スチールBOX?も有るみたい欲しいけど...かせさんのレビュー読んだらまたIMAX上映してくれんかな♡ってなりました
共感そしてコメントありがとうございます。
専門家としか思えない素晴らしいレビューですね。
10年ぶりの鑑賞でしたが、難しいブラックホールの理論にも
ちゃあんと学問の裏付けがあったのですね。
監修のキップ・ソーンさんが3年後にノーベル賞受なさった。
さすがにノーラン監督の作品は、きちんと根拠ある理論なのですね。
だからこそこんなに愛される映画なのですね。
CAGCEさんのnameの由来もSF作品から。
たくさん教えて頂きありがとうございます。
かせさんへ
コメント有難うございました!
インターステラーは生涯ベスト5に入る、超お気に入りだし、TARSは好きなキャラクターのベスト3に入る有機機械です。海兵隊ジョークも良いんじゃないかとw
レビュー読んでるだけで、この映画の愛着度が分かります。実は私もかなりのお気に入り映画です。21世紀に見た映画の中ではベスト1です(今のところ)。ちなみに20世紀のベスト1は、2001年宇宙の旅です。
今晩は。
コメント有難うございます。
”テッド・チャン、ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』原作者と同名ですね。”
ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』の原作となったテッド・チャンは寡作ですが、好きなんですよ。
今作のかせさんのレビューは素晴らしいですね。唸りましたよ。
CN監督の作品自体が、ハイレベルですのでそのレビューは難しいのですが、このレビューは素直に凄いなと思いました。では。