劇場公開日 2024年11月22日

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「崇高と卑屈を内包する人間の行動原理のような何か」インターステラー えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0崇高と卑屈を内包する人間の行動原理のような何か

2023年5月17日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

異常な気候変動によって全世界的な食糧危機にある近未来、人類の存亡を賭けて、他の惑星への移住計画が秘密裏に進行していた。メガホンを取ったのはCGを排した映画製作を手がけるクリストファー・ノーラン。

科学的裏付けを持った“創造性”、極限までIMAX撮影にこだわった息を飲む“映像美”、ロボットの声優にまで演技派を配した“俳優陣”、大学で相対性理論を学びながら執筆された“脚本”、至るところに貼られた伏線を次々と回収しながら、複層的なストーリーを見事にクライマックスまで導く。

世界トップクラスの頭脳を結集してもなお、解明されていることのほうが少ない宇宙。人類の救済という崇高な理想を抱く物理学者やエンジニアが、一瞬で死を迎え得る漆黒の闇に囲まれ、圧倒的な孤独に苛まれた時、感情、卑屈さ、生存本能、恐怖が渾然一体となった先に、人類代表としての“自分”の行動原理に何を見るのか。プランAとプランBが生々しく物語る。

このレビュー執筆時点(2020年4月上旬)、全世界は新型ウイルスの侵食を許し、多数の感染者と死者を出し、震撼している。医療体制は崩壊寸前で、経済は戦後最も停滞し、外出禁止を余儀なくされた影響で世界からネオンが消え、個々人のちょっとした距離すら離れるようにと指導が入る。マスクと消毒液を買い求めドラッグストアには朝から長蛇の列ができ、ニュース番組は朝から晩までウイルスの感染者数を報じ続け、未曾有の局面でもなお、政策ではなく政局論争が跋扈する。

場面設定は全く異なるがしかし、何かが、崇高と卑屈を内包する人間の行動原理のような何かが、どうにもだぶって見える気がしてならない。

えすけん