「愛で世界を救ってもいいじゃない......止揚。 ※書きかけ」インターステラー f(unction)さんの映画レビュー(感想・評価)
愛で世界を救ってもいいじゃない......止揚。 ※書きかけ
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【この映画のポイント】
① 合理的判断と私情(私欲)の両立……愛で世界を救おう
② 嘘に基づいて行動する人間……Based on a Lie
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【解説】
SF映画であり、人間ドラマでもある本作。
SF映画としての出来に関しては後回しにしたい。(だいたい、一般相対論も素粒子物理学も勉強していない。)
映像の作り込みは壮大だ。重力物理学者をバイザーに据え、ワームホールとブラックホールを視覚化。1本の学術論文が出来上がったほどだ。
しかし人類救出のミッションとしては「おかしくないか?」という部分も多々ある。感動のためにおざなりにされた部分もある。
だがそれは後回しでいい。
主軸は「人間とは何ぞや?」ということだ。
つまり「この映画は人間のどんな部分を描きたいか?」という点を考えたい。
具体的には、
①私情と公的奉仕の両立 ②嘘に基づいた行動
この2点が、ノーランの映画作りの基本設計となるだろう。
(①に関しては今作に限った話です)
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本作ではたびたび、「身近な人を救う(愛する)」ことと「人類全体を救う」ことの対立が描かれる。
しかし最終的には「娘に会いたい」という主人公の気持ちが人類を救うこととなる。これはつまり対立するものを同時に成り立たせることー止揚ーだ。
地球に留まっていては人類は救えない。人類を救っては娘を愛せない。娘に「愛する気持ち」が伝わらない。その対立が、5次元空間(?)を利用して情報を送信することによって解消される。娘に「愛する気持ち」が伝わると共に、人類を救う鍵となる情報が送信される。
これによって、愛情も公的奉仕も両立されるのだ。これを止揚と言う。
(愛情は、一方的に表現するのではなく、受け取って貰ってこそですよね。)
人間ドラマとしては、こういったことを描きたかったのだろう。
合理的判断と愛情は両立し得る。あるいは、愛情を根底とした合理的判断もあり得る……というような。
また、人間の判断の根底には情動(?)があるだろう、両者はシームレスに接続して、情動が合理的判断として表出することもあるだろう、といった主旨も伝わる。
そのような人間の内面にかんする考察を、映像として固定・保存し、観客から同じような感想を引き出すーそれが出来たならまあ御の字ではないか。(以上、①。)
-具体的には-
どの場面で、合理的判断と私利私欲が対立しているか?
① 3つの惑星のうち、最初にどの惑星へ行くか揉める場面
② 残された2つの惑星のうちどちらへ行くか揉める場面
③ マン博士が嘘をつき、居住可能惑星の信号を発信した場面
(主な場面をピックアップ)
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またしばしばノーラン作品においては、人は嘘に基づいて行動する。『メメント』然り、『ダークナイト』然り、『ダンケルク』然り。嘘を土台にして築き上げた行動の果てに真実が明かされ、瓦解する。
この点に関してはあまり考察の面白さを知らないので省略したい。
① NASAの閉鎖
② プランBの遂行, 重力方程式の嘘
③ ブランドの恋人がエドマンドであること
④ マン博士
⑤ 第3法則にしたがい、クーパーが置き去りにされること
TARSの存在
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【ストーリー】
小麦が枯れた。今年はオクラも死滅し、次はトウモロコシだろうか。
伝染する疫病により、あらゆる植物が消えていく。
地球は砂漠化していった。
それは穀物がなくなるという食糧問題だけではなく、地球上から酸素の供給源がなくなるという問題を意味した。
このまま行けば、人類は飢えと窒息によって死に絶えるだろう。
おそらく、いまの子供達が人類最後の世代となる。
(本当にこのような論理がなりたつのか?)
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NASAのミッションは、人類の新天地を見つけることだった。地球の外に。
(表向きは、NASAは解体させられた。税金の無駄遣いだからだ。)
(この映画はフロンティア精神復古(?)を掲げる映画でもある。公開当時の予告編にもそれが現れている。)
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主人公クーパーはトウモロコシ農家だ。
息子と娘がいる。
妻は早死にした。MRIが無くなったせいだ。
息子は優秀だが、どこかひねくれている。
娘のマーフは天才的だが、学校では問題児だ。
そんな娘をクープは誇りに思っている。
近頃マーフを悩ませているのが、自室をおそうポルターガイスト現象だ。本棚が揺れ、振動し、本や小物が落下するのだ。
クープとマーフはそれを「幽霊」と名づけながらも、未知の現象を解き明かそうという科学的精神を持っていた。
クープはエンジニアであり、元パイロットだ。
今では彼の能力が必要とされる場所はどこにもない。
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ある日クープたちを襲った砂嵐。
自宅に舞い込んだ砂塵が、床に奇妙な模様を描いた。
それはモールス信号のような、規則的な間隔でならぶ縦線の列だ。
その異変が起こったのも、「幽霊」の現れるマーフの部屋だった。
クープは砂塵の模様が重力の異常(おそらく偏り)によって形成されていることに気づく。
そして縦線の間隔がバイナリであるとして考察を進めたクープは、砂模様が座標を示していることに気がつく。
その地点へ向かったクープとマーフに、消滅したはずのNASAが秘密裏に活動を続けていることが明かされる。
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2人が伝えられたのは、土星付近にワームホールが形成され、未知の銀河系(惑星系)への扉がつながっているということだった。
「ワームホールは自然発生せず、人為的に形成するしかない。したがって、"they"が人類を救おうとしているはずだ」とNASAは言う。
ワームホールの人為的形成に、救いの手が差し伸べられていることを期待したのだ。
クープは、人類の居住可能な惑星を特定し、受精卵を持ち込むパイロットとしてリクルートされ、その期待に応えることとなる。
クープは娘に惜しまれながらも、宇宙へ旅立つ。
ークープは嫌々旅立つのではない。パイロットとしての冒険心、エンジニアとしての知的好奇心から飛び立つ。娘を地球に残してでも。ー
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クープが宇宙へ飛び立つということは、たとえ地球に帰還できたとしても、娘と再会できないかもしれないということを意味した。
なぜならば、宇宙へ飛び立っているあいだに、地球にいる人々のほうが老いるからだ。(相対論)
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ラザロ計画。
死から蘇った聖書中の人物の名前がつけられたミッション。人類もまた新しい惑星を見つけて、死から蘇ることができるのだろうか。
(かつてアメリカ大陸を開拓したように)
ワームホールが出現したのは50年前だ。
すでに12人の先遣隊がワームホールを通過し、別の惑星系へ旅立った。
そのうち3人から、「人類の居住可能性がある惑星を発見した」という信号が届いた。
クープのミッションは、3つの惑星を探索し、人類が居住可能な惑星を特定することだった。
その後のプランは2つある。
居住可能な惑星に、現存人類がみな移住すること。(プランA)
もう一つは、クーパー達の携えた受精卵をその惑星で繁栄させ、たとえ現存人類が地球で滅びたとしても、子孫の種を繋ぐこと。(プランB)
もちろんクーパーは、愛する娘を地球で死なせるつもりはなかったし、地球に還って、2人で新天地へ向かうつもりだった。(プランA)
したがって、「地球帰還のため燃料を残しておく」という考えはクーパーの意識裡にあった。
(地球に届いた信号を受け取った直後に惑星へ到達できるのなら、クープはわざわざ地球へ帰還せずとも、「この惑星なら居住可能だよ」という信号を発信した直後に娘が到着するのを待てばいい。ただしこの論理が成り立つのは、第一の惑星(潮汐の惑星)においてのみらしく、第二の惑星(アンモニア氷の惑星)においてマン博士は相当長い時間救助を待っていたらしい。何故ならば、重力の強弱によって時間の経過が異なるからだ。ブラックホール"ガルガンチュア"に近接する第一の惑星は、強重力下ゆえに時間の経過が遅い。というよりも弱重力下の人々が経験する時間に比して、強重力下の人々が経験する時間はわずかだ。(というのが一般相対論の結論らしい)実際、「第二の惑星の重力は地球に比して小さい」という描写がある。)
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さて、土星付近に出現したワームホールへ向かう宇宙船。
(クープの宇宙行きが決まってから打ち上げまでの過程をもう少し描いて欲しかった感もあるし、あのようなすっ飛ばし方でもよかったような気もする)
クルーは4人。飛行士のクープ。生物学者ブランド。重力物理学者。もう一人の学者。
彼らはシャトルで地球を旅立ったあと、母船とドッキングし、休眠カプセルに入る。土星付近で覚醒し、ワームホールへ入る。
ワームホールへの突入は未知の体験で、ブランドは"they"からの接触を見る。
(ここであの接触が"they"によるものだと分かるのは、ブランドがそう説明しているからで、筆者がそのように願うからだ。つまりオチのためだ)
ワームホールを抜けた彼らは、ブラックホール"ガルガンチュア"の支配する未知の惑星系に到達する。
この惑星系に、人類の移住候補3つの惑星が存在する。
宇宙旅行をして地球に帰ると、年を取らない。
周りの人々は年を取っている。
娘が死ぬ前にはやく地球へ帰りたい。
だからクープは、1番時間の経過がない方法で惑星選びを行おうとする。
この点に関して「クープは私情を挟んでいる」とほかのクルーから批判される。
(ただしブランドもブランドで、恋人のいる惑星に行きたがるよう私情を挟んでいる。だが最終的には、私情を挟んでこそ成し遂げられる公的奉仕があると明かされる。愛で地球(人)が救われる。)
議論の結果、選ばれたのは、ブラックホール"ガルガンチュア"に最も近い惑星だった。
ここでは重力が強い。先遣の宇宙飛行士の到着から数時間で、クープは到着した。(その星における経過時間)
しかしそれゆえ、地球における時間の経過も早い。この星での1時間は、地球における7年間の経過を意味する。
結局、クープ達は惑星にかんするデータを回収できないどころか、膨大な潮汐力にあおられ仲間の1人を失う。この惑星は一面が海で覆われた星だったのだ。(そんなの空から見ればわからないか?危険を回避できたのでは?→一応、空が雲で覆われていたことになっている)
先遣者も同様に水に飲み込まれて死んでいた。浅瀬に着陸し、遠目に見える波を山と見たものの、実は高さ100mを越える大波だったのだ。
クープが惑星から脱出し、惑星外の母船で待っていた仲間の元に戻ったとき、そこでは23年と4ヶ月が経過していた。
地球から送られてくるメッセージ。
息子には彼女ができ、高校を卒業し、農家となり、結婚し、長男が生まれ、死に、次男が誕生する。義理の父が死を迎える。息子は父の帰還を諦め、メッセージの送信をやめる。
だがNASAに才能を見込まれ重力物理学者となった娘マーフが、ようやくメッセージを送ってくる。
父の出発にふてくされ長らく心を閉ざしていたが、ようやく父に語りかける。
クープはその時間の経過に涙する。