「心情と生き様」ラッシュ プライドと友情 kenMaxさんの映画レビュー(感想・評価)
心情と生き様
舞台となるのは、70年代のF1の世界です。
登場する主人公、ニキ・ラウダとジェームズ・ハントは実在したF1ドライバーであり、物語も実話を基にしたものです。
そう聞くと、F1好きじゃないと楽しめない映画かと思われがちですが、ストーリーだけを追っても男の心情と生き様を描いた良作だと思います。
とは言え、F1の事をある程度知っていた方が楽しめるのは確かなので少し書くと、
F1は世界各国のサーキットを巡り、順位によりポイントが加算され、シーズンを通して最も多くのポイントを獲得したドライバーがワールドチャンピオンとなります(各国で行われるレースの勝者を"チャンピオン"と言いますが、それはそのレースの勝者であり、皆が最終的に目指すのは"ワールドチャンピオン"です)。
レース中にはピットと呼ばれる自分のチームのエリアがあり、トラブルやマシンのセッティングを変更する際にピットに向かいメカニックが対応にあたります。作中では雨天の際にタイヤを交換したりしています。
70年代当時はドライバーの安全はほとんど考慮されていないマシン設計なので、死亡率がとても高い職業でした。現在のF1は厳しい安全基準がありますので、当時ほどは死亡事故が起こりにくくなっています。
基本、このぐらい知っていれば違和感なく観れると思います。
主役の二人は実際のニキ・ラウダとジェームズ・ハントに外見がよく似ています。演技はもう一つな印象ですが、逆にリアル感があります。
台詞ではユーモアたっぷりのやり取りに感心しました。
個人的には作り手が良かったと思います。70年代の雰囲気を出しつつも古臭く感じさせない映像表現は自然に観ることができましたし、当時のF1マシンを使っているにも関わらず上手くレースの躍動感を描いています。色合いや照明で描く心情や雰囲気の表現も上手かったと思います。
破天荒な天才肌のジェームズ・ハント
現実的で理論派のニキ・ラウダ
その二人がワールドチャンピオンを巡って激しいバトルを繰り広げます。どちらが正しいとかレーサーとして勝っているとかそういった話ではありません。
この作品のメインは人間そのものであり、男の生き様です。
挫折や苦悩、目的へ向かう方法の違いはあっても、どんな状況でも前に進むのだという強い思い。そして、そのクライマックスとは。
観て損はない作品です。