「う~ん、気持ちのよい対比!!」ラッシュ プライドと友情 CBさんの映画レビュー(感想・評価)
う~ん、気持ちのよい対比!!
1976年のF1を争ったふたりのエースドライバー、ジェームズ・ハントとニキ・ラウダの話。
映画は、ジェームズ・ハントの奔放さとF3のレースシーンから始まる。当時F3の花形レーサーだったハント、その後彼をメインドライバーとするヘスケスチームはF2を経て、スポンサーなしの自力でF1へ進出する。
一方のニキ・ラウダ。オーストリアの有名な実業家の息子だが、実家からは勘当され、銀行融資で金を調達しレーサーがいなかったF1チームのBRMに転がり込み、車を最速に改造するとんとん拍子にフェラーリへ。
「やつら(雇い主)は、俺たちドライバーを、役に立たなきゃすぐに交換する。だけどよ、大切なのは情熱と愛だろ」 と語る先輩ドライバーに、「それは当たり前でしょ。僕も、もっと稼げる仕事があるなら、そっちをやりますよ」 と冷静に語るラウダ。一方のハントは、トップモデルのスージーとの結婚など人生を楽しむ。
この対照的なふたり。しかしめざすものだけはいっしょなふたりを描くことで、本作は軽快に進む。
ラウダはこの年のチャンピオン街道をひた走るが、歴史が示す通り、ドイツGPで大事故に見舞われ生死をさまよう。しかし、奇跡的に6週間で復帰し、不在中にポイントを詰めてきたハントと、最終戦、日本の富士スピードウェイでの決戦に臨む・・・。時に現実は、映画以上のできごとを引き起こすんが、これなんかまさにそれだね。当日は、ラウダが大事故を起こした日と同じ豪雨。この最終レースは、みんな、必見ですよ。それもスタート30秒前をぜひご覧ください!
独りで行儀よくするラウダと、みんなで奔放に騒ぐハントを対比したこの映画を、軽快に成功させている要素は、ハントの奔放さを好意的に描いていることだと感じる。たとえばハントのスージーとの結婚生活は、酒、麻薬、浮気、短気で、あっというまに破綻を招くのだが、そのあたりの描写は限りなくあっさりしており、どろどろさせない。
ラウダのセリフは、通常の車を運転する際に、「スピードを出したら危険なだけだし、賞金も出ないのに速く走る理由がない」 と言ったり、ハントに向かって 「1回、2回は勝てても年間は勝てない。しょせんお前はパーティの主役だ」 と言ったり、「幸せは僕を弱くするのではないか」 と悩んだり、実はけっこうあるのだが、ロマンを語り情熱を求めるハントが、その思いを語るシーンは多くない。ラスト近くの 「勝った後に楽しまなければ、勝つ意味も、勝つために努力することの意味もなくなってしまう」 くらいだ。そしてそれがかえっていいのだと思う。行動そのものがハントを示している、ということだろう。上手な映画だ。
13年間走り3度もチャンピオンになったラウダと、たった一度だけF1チャンピオンになったハントでは、成績では大きな差があるものの、本作で語られるように、ラウダの真の意味での好敵手はハントだったのだろうな。ということを、心の底から楽しめました。よかった。
おまけ
・400℃を超す炎に1分間包まれ、肺を焼かれるという大事故から奇跡の生還を果たすラウダ。もうだめかと臨終儀式のために呼んだ牧師が到着したとたんに死地から回復したという、現実においても劇的だったであろうシーンは、映画にもさりげなく差し挿まれていたね。
・今回の鑑賞で残念だったのは、TV放映の録画を観ているので、ラストに音楽とテロップがないことだ。やはり劇場鑑賞が、最高だなあ。
・「宿敵の存在を呪わず、神の恵みだと思え。賢者は敵から多くを学ぶ」
コメントありがとうございました。
”孤高”って、本当に大変ですよね。
ラウダ氏は奥様と言う理解者がいたから、持続可能だったのかな。富士での決断と、その後の奥様とのやり取りは、後付けフィクションなのかもしれないけれど、心を揺さぶられました。
ラウダ氏は「幸せは敵だ」と言ったけれど、ここのシークエンスを見る限り、短絡的にならないという意味でも、「幸せは最良の味方」だという証明だと思います。
おはようございます。
今作は、劇場公開時と、昨年のコロナ禍で映画館がシャットダウンから徐々異に営業再開し始めた時に、有難い事に近くの映画館が掛けてくれたので、嬉々として観にいったのですよ。
で、久しぶりに観て、再度嵌りまして・・。
良作は再鑑賞に耐えうることを、認識した作品でもありました。
今晩は。
「宿敵の存在を呪わず、神の恵みだと思え。賢者は敵から多くを学ぶ」
この言葉は、忘れ難いです。
映画って、(大袈裟かもしれませんが)厳しき日々を生きる中で、時折金言を齎してくれる作品もあるのだなあ・・、と思った忘れ難き映画でした。