鑑定士と顔のない依頼人のレビュー・感想・評価
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欲のある鑑定士と依頼人。
もしもこの依頼人が絶世のブスだったり(ゴメンなさい)、
あるいは屈強な肉厚男だったり(ホントすいません)、
まぁそういう部類だったら、こんなことには…という、
巧く描いてはいるけど、話としては大変ありがちなお話。
鑑定士にしてオークショニアの彼には、
隠し部屋に溜めた美女だらけの肖像画コレクションがある。
冒頭のこの行で、あーコイツはきっとやっちまうぞ。と、
私はすぐに思ってしまったけれど、普通はどうなんだろう。
タイトルの「顔のない」というところがミソ。
最後まで依頼人は姿を見せないかと思うと、そうではなく
後半からは頻繁に彼の生活に入り込んでくる。彼が愛し、
彼が認め、彼が許したのなら、それはコレクションと同じ。
しかし肖像画は動かないのに、人間は動く(爆)
精神病で部屋から出られない彼女が彼の徒労で変化する。
そして、生身の恋愛を知らない老鑑定士ならではの、
坂道を転げ落ちていく恐ろしい破滅に向けた助走が始まる。
確かに宣伝通りの面白さで、複雑に絡み合う?(でもないか)
登場人物達のラストでの収束は見事だ。
ただ奇想天外な話というのではないため、疑って観ていた
場合はその前に展開が読めてしまう。もう一度観たくなる
ためのカラクリを、おそらくは序盤から散りばめてあるので
そこを拾いたくなるというのは確かにあったけど。。。
終始、懸命なJ・ラッシュが大熱演。彼ならではの役どころ。
彼の恋愛相談に乗るJ・スタージェスもいい味を出している。
老人の恋愛にドキドキ?しながらも、この場面は何の為に?
と思いながら観進めていくと、ネタバレのあとが面白いかも。
立場違えど、オタク系の若者(生身のオンナを知らない)にも
通じるところがあるかな。2Dか3Dかっていう。
(観終えて思うのは、やはりカネかという事実。欲望の根源)
夢と愛
この話はやはりオチをどう捉えるかで評価が分かれるところですね。
私としては、観終えた直後は後味の良い感じはしませんでしたが、後から本編に散りばめられた伏線を思い起こしたり考察したりするのが楽しめたので良しとしよう、と言ったところでしょうか。
私がオチを観てから特に違和感を感じたのは屋敷の調度品です。
一流の鑑定士であるヴァージルに鑑定を依頼する以上、それがいい加減なものである筈がありません。
あれだけの品を、一体誰がいつ揃えたのでしょうか?
普通に考えてビリーなのでしょう。
長年ヴァージルの相棒であった彼ならば、それなりのものを仕入れられるでしょう。
ですが、あれだけ夥しい数の家具や調度品を揃えた資金や時間はどうなのでしょうか?
ビリーの仕業であれば、オークションでの裏の仕事の分け前の殆どを注ぎ込んだのでしょうね。
長い時間をかけてコツコツと揃えたものなのでしょう。
とするならば、それは大層な執念の成し得る業としか言いようがありません。
その動機は何か?
ヴァージルの所蔵品の強奪とも考えられますが、それにしては迂遠で無駄が多いですね。
思うに、ヴァージルから愛を奪うのが最大の目的だったのでしょう。
ビリーはヴァージルに画家としての夢を断たれた、少なくとも本人はそう思っている。
だからヴァージルから愛を奪ったのだ。
しかもご丁寧にわざわざ彼に愛を与えてから奪うという念の入れようだ。
これが本当に正しいかどうかはわかりません。
ですが、こんなことを考えさせる余韻こそが、この作品最大の魅力なのでしょうね。
中高年、あこがれの恋愛
この映画の予告編を観たはずなのに、どんでん返しがあることを忘れていた。
おかげで、初老の鑑定士と広場恐怖症の女性のラブストーリーに没頭できた。
著名な鑑定士ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)は奇妙とも言える依頼を受ける。あるヴィラに出向くのだが、依頼人の女性は姿を見せない。だんだん興味を惹かれていくヴァージルは仕事仲間のロバート(ジム・スタージェス)に相談しながら彼女の心を開かせようとする。
ヴァージルが暴漢に襲われ倒れているところへクレア(シルビア・ホークス)がついに外に出て駆け寄るシーンは感動的であった。
ジュゼッペ・トルナトーレの企みは、競売人としての仕事を終えたヴァージルの身にふりかかる。
絵画に贋作があるように、愛にも偽りのものがある。
そのことをトルナトーレは見せたのだ。
ラブストーリーに没頭していた身としては、ヴァージルほどではないにしろ、その喪失感は相当のものであった。
ヴァージルとロバートの関係、ビリー(ドナルド・サザーランド)との関係、そのスタートが見えないのは、ややずるいところではあるが、見事にだまされた。
もう一度観たら、まったく違う景色が見えるのだろうか。
圧倒されました
久々に圧倒された作品です。
主人公バージルの緊張感あふれる進行と徐々に明らかになる顔のない依頼者との遭遇。圧巻は、エンディング一歩手前のコレクター全てがロボットによって破壊されたところ。エンディングでは、彼女を待ちながら時計カフェの中をクローズダウンするのが何とも悲しくさせます。
ヴァージル・オールドマン…、童貞・ジジイって名前なのか。
あの絵画の部屋を見て最初に思ったのは、 「これ最後に全部なくなるんだろうな。」だった。
「女の愛は偽物。絵は全部盗まれる。」と思わせといて、 深遠な何か思いもつかない大どんでん返しがくるはずと思って見てたら、 そのまんまでガッカリした。
黒幕は女じゃなくてビリーだろうけど。
あとロバートの動機が分からない。お金もらってやっただけかな。なんか伏線見逃してる?
元々悪くない関係の人騙して、店畳んで失踪する位の理由がよくわからん。
二次元からの解放ってビターなハッピーエンド・救いと解釈もできるけど
正直それは後から頭で考えた事で、最初に感じた感想は後味悪りぃ…だった。
ビリーの動機は復讐で、救ってあげたいと思って誰かがしたんじゃなくて、 無理やり放り出されただけだし。
ビリーだって詐欺の共犯者として結構な報酬受け取ってたろうし、復讐ねぇ…って感じ。
老人ホームとナイト&ディの時系列は見てる人に解釈を委ねる為に敢えてぼかしてると思う。 (私には老人ホームが後としか感じられませんが。)
偽物の中にも真実が…という台詞が印象的にもちいられるけど、彼女の気持ちは偽物だったけど、自分の中に芽生えた愛は本物だった、と言う風に解釈する事にしましたが、本物だからこそ後味悪い。
登場人物は魅力的で美術や映像も美しいし、何より恋に溺れる老人の演技がすばらしい。
すばらしいからこの愛が本物であって欲しいと感情移入しながら見たが故の後味の悪さなわけですが、
みもふたもない言い方したら童貞拗らせた老人が長年の知人に逆恨みされて結婚詐欺にあう話。
主人公も自分の立場利用して不当な競売してたり、なんの罪もない善人って訳じゃないけど。
30代童貞の魔法使いアニオタが引きこもり美少女に出会って成長する話と思いきや実は騙されてて、プレミアついてるフィギュア売られちゃって、数少ない友達にも裏切られて鬱になる話として置き換えたら…。
日本でその設定で映画作ったら、女の子は途中から童貞男を本当に好きになりはじめて改心、男も二次元卒業、人生に向きあうようになるハッピーエンドの成長物になりそうだけど。
あとこれもみもふたもないけど、現実あんなに仕事で成功する人は、不器用で変人でもモテるか、それなりにコミュ力あってそつなく恋愛とすると思う。リアルを追及する話じゃないので蛇足ですが。
見逃してる伏線がありそうなので、誰か一覧表作ってくれないかな。もう一回見に行く気はない。
ジジイ
詐欺の片棒担がせてたパートナーのこともどこか一段低くみてたしな。相棒って感じじゃなくて駒みたいな扱いしてたし。元はと言えばこの爺さんが悪いのでございますから。因果応報。
あと、やはり歳くって女にのぼせ上がるもんじゃない。
じぇじぇじぇ!
『ニュー・シネマ・パラダイス』の名匠トルナトーレ監督作品だけに、全体的に映像がシックで重みのある表現。そして人物造形にも監督ならではのウイットを滲ませつつ、個性の深みを感じさせる演出を感じさせてくれました。
なかでも主役に抜擢したジェフリー・ラッシュについては最初からラッシュを念頭に脚本を充て書きしただけに、まさにハマり役の好演。愛とは無縁の気難しい主人公をいかにもそれらしく表現してくれました。
美術品鑑定依頼に絡み、大きな謎が仕掛けられたこの作品は、一見すると美術品に絡む虚々実々の駆け引きがメインのサスペンスに見えてしまいます。しかし、中盤に顔を見せなかった依頼人がネタバレされると、ガラリと映画のルックは表情を変えてしまうのです。60歳を超えた主人公と、27歳の鑑定人が恋に落ちていく展開には、ビックリしました。ただこのビックリは、ラストに「倍返し」となって、さらに驚く結末を迎えるのですが、さすがにこの結末だけは、口が裂けてもネタバレできません。
さまざまな「愛」の形を描いてきた監督が本作で問いかけるのは、“愛を信じられるか”といこと。最後のドンデン返しを見終わったとき、強烈にこの愛を信じてよかったのかどうか、自問自答したくなること請けあいです。皮肉だとも感じる人もいるかもしれません。けれども主人公の天才的美術鑑定士ヴァージルが老いらくの恋に落ち、初体験まで経験する過程を振り返るとき、どうしても愛の実在を強く確信したい気分になってくるのです。そこに監督の狙いがあるのだと思います。
ヴァージルにとって、コレクションの絵画で描かれた女性たちでしか“愛”を信じられなかったのです。女性とは縁遠いばかりか、プライベートでは、誕生日でさえひとりでディナーを迎えることが気にならないくらい、人付き合いを厭う性格の持ち主でした。
ちょっと変わっているのは、仕事柄か、ずっと手袋をしていること。食事中にまで手袋をしているので周りの客が怪訝な顔をするものの、彼にとってはちっとも気になりません。彼にとって手袋というのは仕事だけでなく日々を過ごす大事なパートナーだったのでしょう。ただ色とりどりの100袋近い手袋がコレクションのように綺麗に並べている彼の部屋の光景は、ちょっと変わっている印象を受けてしまいます。変人といってもいい部類の人といえそうです。
そんなヴァージルに、親の遺産で引き継いだ屋敷にある家財の鑑定を依頼してきたのがクレア。彼女も変わっていて、自ら鑑定を依頼しているのに、肝心のヴァージルに会おうとせずドタキャンするばかり。これには怒り心頭のヴァージルでしたが、彼女が心の病気で、恐怖心から人に会えないし、屋敷からも出られないというのです。おそらくパニック症候群なのでしょう。壁ごしに声だけのやり取りをしているうちに、彼女の身の上も知り、次第にヴァージルは、クレアに会ってみたいという衝動が押さえきれなくなります。
いくら人嫌いの偏屈でも、『声だけ』の人物には会ってみたいという好奇心が疼くものです。部屋の物陰に潜んだヴァージルは、クレアをひと目見て、その美貌に息を呑み、老いらくの恋に落ちてしまうのも納得の展開でした。そんなのぞき見がずっとバレないことはありません。ヴァージルが正直に告白したとき、クレアは発狂したように拒絶するものの、そのあとすぐに深い仲になってしまうのは、「人嫌い」という孤独な似たもの同士が引き寄せたからではないでしょうか。ふたりが結びつくまでのシーンは、お互いの孤独が癒される心温まるものでした。シルバー世代の方ならヴァージルが羨ましく感じられることでしょうね。
そんなヴァージルに恋の指南をする仕事仲間の修理工ロバートの存在も、友情を心地よく感じさせてくれました。ところが同居した途端クレアが行方不明になって、ストーリーが急転します。ヴァージルは、ロバートがクレアを隠しているのではないかと猜疑心をいだいてしまうけど、そんな予想を超えて、トンデモないことが発覚するのです。
…じぇじぇじぇ!
本作でも友人の画商ビリー役として登場するドナルド・サザーランドは存在感たっぷり。ハンガーゲームの独裁者役とは雰囲気が全然違います。揺れるヴァージルの心をしっかりサポートしていました。
さらに。『ニュー・シネマ…』と同じく巨匠エンニオ・モリコーネとまた組んおり、衝撃の結末を、哀愁に満ちた音楽で包み込んでくれました。
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