「恋に盲目な女は冠など関係無い」ダイアナ 全竜(3代目)さんの映画レビュー(感想・評価)
恋に盲目な女は冠など関係無い
エリザベス2世の『クイーン』
ジョージ6世の『英国王のスピーチ』
etc.現代史の英国皇族が主人公の映画は傑作が数多く有れど、今作は真打の中の真打と云える
追突事故であまりにも早い死の一報は、当時、短大最後の夏休みを送っていた私の耳に唐突に飛び込み、暫し茫然自失となった状況を今でも克明に記憶している
大富豪との交際の途中、執拗なパパラッチの追跡を逃れようとした末の惨劇やと思い込んでいたが、悪夢の裏には全く異なる恋物語が投げかけられていたとは知る由も無かった
結婚、出産、離婚、対立、そして死と全てにおいてドラマチックな人生だが、最も注目を浴びていた泥沼の離婚劇には殆ど触れていない
離婚後に出逢った心臓外科医との恋愛に焦点を絞り、彼女の生涯に迫る手法は、より人間くさく喜怒哀楽を咲かせている
彼の部屋にストーカーの如く勝手に侵入したり、車のトランクに隠れ、密会を重ねたり、
挙げ句、成就されない仲と悟るや、カメラマンに富豪とのバカンスを撮影させ、挑発的に報道させるetc.
盲目的な恋の衝動に、プリンセスの威光は微塵も輝いていない
率直にぶつける相手への恋心が、1人の女性の素顔として吐露されるからこそ、観客は引き込まれる
マスコミとの軋轢が更に溝を深め、終生蝕んでいた孤独や猜疑心はブレーキ不能と化し、衝撃的な悲劇へ一直線に突き進む
当時を振り返りつつ銀幕と対峙する私は、息を呑み、その味はやがて直ぐ涙へと変わった
単なる悲劇のヒロインではない高難易度の美女を渾身の演技で憑依させたのは、名女優ナオミ・ワッツ
『キングコング』etc.で知る限り、ダイアナとは似ても似つかない女優やのに、髪型や仕草を完璧にマスターしているのは圧巻の一言
改めてダイアナという数奇な華に見惚れてしまった
特に生前、ヒョウ柄のハイレグ水着を着こなしていたのは死後、最大の新発見である
ネットで画像ないかな?
喫茶店で検索する私の鼓膜をエルトン・ジョンの『Candle In The Wind』が冷たく通過したのは云うまでもない
では最後に短歌を一首
『光る眼に 追われし華は 愛に飢え 庭園を往く 胸の震えや』by全竜