「これいただくわ」ブリングリング 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
これいただくわ
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S.コッポラ、過去作では一貫して若者たちの繊細な感情の揺らぎを描いてきた。
現代に合ったテーマだし、それを上手く撮ってきたのだけれど、毎作、登場人物たちの心情・孤独を察してと言わんばかりのショット(無音で主人公の顔のアップなど)が長々入っており、キラーショットならぬ、「察してショット」に、意図は判るが、あえて察したくないというアマノジャクな反感を、個人的には抱いてきた。
が、本作では、得意の「察してショット」を封印。
心情を深読みさせることなく、少女たちの行動を、そのまま写す。
感情のキャッチはない。
言い訳も共感も教訓も説教もない。「苦み」も「甘み」もない。
ただ、行動の軌跡をキラキラと描くだけ。
ある意味、腰の据わった徹底ぶり。この「居直り」が非常に面白かったなあと思う。
これ、アホな男を徹底してそのまんまで供したスコセッシの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に、ちょっと近いのではないか。
S.コッポラと同時代の監督さん達…PTA、W.アンダーソン、O.ラッセルらは、スコセッシの息子達とアメリカ人批評家から呼ばれているようだが、案外、スコセッシの図々しさに一番近いのは、今作のS.コッポラではないかと言ったら褒めすぎか。
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実話ベースの本作を観て、クレイジーなコメディ小説「これいただくわ」(ポール・ラドニック、1990年)を思い出した。似た話だった。
25年前は架空のコメディだったのが、現実になっちゃったという今の時代。
現実そのものが、もはやコメディ。
ペラペラでキラキラな「今」をパッケージして、
それをそのまま撮った本作。この手法、充分アイロニーが効いていて面白いと思う。
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