「酒とバカの日々。 ベタなお笑いに心地よさを感じるものの、ドラマ部分は弱め。」21オーバー 最初の二日酔い たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
酒とバカの日々。 ベタなお笑いに心地よさを感じるものの、ドラマ部分は弱め。
21歳のお祝いにバーへと繰り出した高校時代の悪友3人が繰り広げるドタバタコメディ。
3人組きってのお調子者、ミラーを演じるのは『フットルース 夢に向かって』『プロジェクトX』のマイルズ・テラー。
R指定コメディ映画の興行記録を塗り替えた大ヒット作品『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(2009)の脚本家コンビ、ジョン・ルーカス&スコット・ムーアが初めて監督を務めた作品。またおんなじ酔っ払いネタかよ!アンタらそれしか出来ねーのかっ!!…なんて言ってはいけない。
飲酒可能年齢(アメリカは21歳からなんですね)に達し、大手を振って飲み歩けるようになった若者たちによる”明日なき暴走”。多かれ少なかれ誰もが経験したであろう若気の至り的あるあるネタと、そんな訳ゃねーだろ💦というぶっ飛びコメディ、その境界線を反復横跳びするかのように行ったり来たりする本作には、共感性の笑いとスラップスティック・コメディの要素がバランスよく配されている。マジ大爆笑っ!!…というノリでは無いしお笑い要素もベタなのだが、どこか可愛らしさを覚える作品である。
喜劇ではあるのだが、その背後にアジア系がアメリカで生きる事の苦悩が描かれている。封建主義・家父長制に縛られ、勉学で身を立てる事を強要されるジェフ・チャン。彼の父親が息子を医者にすることに躍起になっているのは、何も儒教的価値観が根付く東アジア系だからだと言うだけではない。小柄で幼く見える彼らが欧米社会で舐められずに生き抜くためには社会的ステータスの高い職業に就く必要がある。その強迫的な観念と、そこから来る窮屈さを本作は鋭く抉り取っていたように思う。
『ミナリ』(2020)、『私ときどきレッサーパンダ』(2022)、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』など、近年はアジア系を扱った話題作も多いが、それよりもずっと早い段階でそれを描いた本作には先見の明があると言える。
父権主義に一発喰らわすクライマックスはスカッとするが、それまでのドラマは弱い。ジェフ・チャンのポケットから拳銃が見つかると言うショッキングかつスリリングな展開を全く活かすことが出来ていなかったのは残念。過剰にシリアスにする必要はないが、もう少し起伏が欲しかったところである。映画のテンポが一定なので観ていてダレるんですよね…。
アジア系アメリカ人の苦悩をテーマの一つにしていたはずなのに、最後はユダヤ系青年のラブストーリーで締めるというのもなんかズレてね?と思ってしまったし、ストーリーは正直言って今ひとつ。ひと笑いは出来るが、ずっしりと心に残る映画ではない。まぁそういう作品も必要だし、これはこれで良かったとも言えるんだけどね。