「愛か、エゴか」私の男 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
愛か、エゴか
前日見た時は途中でギブアップしてしまい、評価1の採点。
でもどうしてもしこりが残ったままの感じだったので、万全の態勢で再鑑賞。
確かに取っ付き難い部分はあるものの、力作であった。
震災で両親を失った花は遠縁の淳悟に引き取られ、紋別で寄り添うように暮らして来た。ある日、地元の名士が流氷の上で死体となって見つかり、二人は逃げるように東京へ…。
言ってしまえば、男の妄想&変態映画。
幼い少女を引き取り、やがて美しく成長した娘と…。
義理とは言え、禁断の近親愛。
しかし、当人たちは激しく求め合う。
その激しさが、ある事件を起こす…。
何処か気だるく、退廃的な前半から、スリリングな展開へ。
激しすぎる愛故に罪を犯す。
その愛の為に、また罪を犯す。
それは真の愛なのか、エゴなのか。
モスクワ国際映画祭で男優賞を受賞した浅野忠信も素晴らしいが、やはり二階堂ふみに圧倒される。
あどけない中学時代から、美しい大人の女性へ、滲み出る妖艶さ。
流氷の上での叫び、さらにその極寒の海にまで浸かる大熱演。
国内賞レースでほとんどノミネート止まりで受賞ならず、納得出来ない!
個性派・実力派が揃い、中でも藤竜也は「砂の器」の緒形拳を彷彿させるような好助演。
近藤龍人の撮影、ジム・オルークの音楽…熊切組の手腕は他の邦画と比べても群を抜く。
熊切和嘉の作品はやはりなかなかに取っ付き易いものではないが、その演出力は認めざるを得ない。
ラスト、花が見せる笑みと、絶対気になる台詞。
男の不甲斐なさを感じてしまった。
「そこのみにて光輝く」同様、こういう作品は一回だけじゃ評価出来ない。
見直しといて良かった。
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