「私の血。」私の男 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
私の血。
先般のモスクワ映画祭でグランプリと最優秀男優賞を獲得。
北海道紋別の雪と流氷に閉ざされた光景が脳裏に残る、
映像的には本当に群を抜いた素晴らしい作品なんだけど、
内容は紛れもない禁断モノ、孤児の少女と引き取った男との
濃密で隠微な世界がこれでもかと続いていく作品。
まぁ…けっこう怖いし、気持ちのいい世界とは言い難い。
直木賞を受賞した桜庭一樹の原作は読んだことがないのだが、
原作は時系列的に映画とは逆らしい。過去へ遡っていく原作と、
花(山田)が幼かった頃の奥尻島の事故現場から始まる今作は、
冒頭からかなり印象的に違うんじゃないかと思える。
ただ、花が二階堂ふみになってからの展開は、それ見たことか^^;
というまでに不気味でインモラルな世界が幕を開け、淳悟(浅野)を
翻弄していく様子が、元カノの小町(河井)でなくても、まぁ恐ろしい。
いつもの二階堂ふみ。全開!という感じ。
彼女を引き取った淳悟という男もかなりの変遷を見せる。何だか
陰のある不気味な雰囲気が花とよく似ているが、それもそのはず、
中盤で二人の関係がアッサリ明かされる。(冒頭でも言ってますが)
それで余計に気味悪くなってくるのだが、でもどうだろう。
こんな田舎で二人きりの世界で暮らしていたら、年頃の少女が頼る
男は父親だけ。まさに私の男。恐ろしいまでの狂気が互いを守り合う。
やがて起こる殺人事件。大塩(藤)がどんなにか目をかけて大切に
二人を見守ってきても、やはり事件は起きた。赦されぬ業の世界。
花の狂気は淳悟の狂気とピッタリ一致する。それが何より悲しい。
もしこの二人があの事故で出逢っていなければ、どんな人生を
歩んだだろう。社会人になった花は美しく、彼氏にも事欠かない。
しかしそんな花を淳悟が離さない。淳悟の懐から出ていった花も、
やはり添うことに従順なまま。最後の最後まで気味の悪い面勿を
崩さず、圧倒的表現でこの世界観を作りあげた熊切監督の脅威。
原作者同様、タブーに果敢に挑んでゆく姿勢には拍手を贈りたい。
(だけどモロ師岡、ありゃないわ。モロ可哀想。まぁ高良君もか…)