「タネも仕掛けもタップリございます」グランド・イリュージョン 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
タネも仕掛けもタップリございます
いやー、楽しかった!
最初から最後までこれでもかと楽しませてくれる一級エンタメ!
ルイ・レテリエ監督、作品のスケールも面白さも
着実にレベルアップして来てる気がします。
劇中で登場するような大掛かりなマジックショーは
観たことが無いけど、自分が観客の一部になってこのド派手な
ショーを楽しんでる感じがして、すんごく楽しかった。
『一体どんなマジックを披露してくれるのか!』という
ワクワク感が冒頭からハンパないすね。
『フォー・ホースメン』の4人も個性豊か。
彼らのテクニックを見せつけるオープニングや警察署での
やり取りにもワクワクするし、人の裏を掻くのが生業の
マジシャンらしい、軽妙でハイテンポなトークの4人の
掛け合いが楽しい!
知的スピード感のあるJ・アイゼンバーグと人を喰った
メンタリスト役W・ハレルソンは特に面白かった。
スポンサーさえも騙す中盤の展開からはいよいよ先読み不能。
いったい何が目的なのか?というサスペンスが最高潮に
達したのはあの辺りだったと思う。
ただ中盤、刑事側に視点が移動してからが
やや失速したように感じたのは残念な点かな。
銭形の父っつぁんよりルパン一味を観てる方が楽しいと言うか、
会話の軽妙さやスピード感が減じてしまったように思えた。
ただ、その合間をカンフー映画ばりの格闘アクションや
ド迫力のカーチェイスで補うあたり、やはり抜け目がない。
もうひとつの不満点は『フォー・ホースメン』の動機かな。
彼らの最大の目的は秘密結社“アイ”への入会だったようだが、
この“アイ”の設定がイマイチ分からず。
“アイ”はマジックではなくて本物の魔法を司る集団で、
主人公たちはその本物の魔法を操る真のマジシャンを
目指していた、みたいな動機だったと思うんだけど……
これ、解釈合ってます?(汗)
肝心の動機がもうひとつピンと来なかったので、彼ら4人に
感情移入するのが、終盤、やや難しかった気がする。
ただ、“アイ”への入会以外に彼らを動かしたのは『意地』だろう。
『マジックは、金銭の為ではなく、純粋に人を感動させる為に
あるべきだ』というマジシャンとしての意地、あるいは決意。
常ににこやかにショーを披露していた彼らが、最後の
イリュージョンで神妙な面持ちで観客に語りかけるシーンが
一番頭に残っている。
人を楽しませる事で対価を得るのは良いが、決して人を
食い物にしてはいけないというエンターテイナーとしての誇り。
まあメンタリストさんは冒頭でアコギな金稼ぎをしてたが(爆)、
過去の事は水に流しましょうと言うことで。
さて、肝心のラストについてだが、個人的には「騙されたッ!」
という快感よりはアガサ・クリスティ的な力業(ちからわざ)の
ドンデン返しだったなあという印象が強い。
だけど、観客のド肝抜いてやるぜ!という良い意味での
ハッタリ精神が感じられてグッド。
メラニー・ロラン演じる捜査官が何らかの形で絡んでくるんだろう
とミスディレクションされていたのも確かだしね。
ただあのオチだと、メラニー・ロランのキャラについては
実はほとんど説明されていない事にもなってしまう訳だけど……
まあ可愛いから良し(←オイ)。
以上!
『タネも仕掛けもございません』どころか
『タネも仕掛けもたっぷりございます!』な、
サービス精神満点のエンタメ映画でした。
〈2013.10.26鑑賞〉