「戦慄のエピソード?」ファントム 開戦前夜 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
戦慄のエピソード?
潜水艦ものに外れなしのマニアの格言を信じて鑑賞、地味な部類でしょうが楽しめました。
1968年に、ソ連の潜水艦K‐129がハワイ近海で謎の撃沈を遂げた実際の事件を題材にしている。アメリカが発見し海底で二つに折れたミサイルが回収されたそうだが米ソ共極秘にしているので真相は闇の中である。
プロットとしては勿論フィクションなのだが隠密行動では似たような「レッド・オクトーバーを追え! 」の軍幹部の亡命より過激派の陰謀の方がもっともらしいが、音響装置で偽装し米中戦争を目論むのでは007「トゥモロー・ネバー・ダイ」のメディア王カーヴァーもどきの妄想劇に見えてしまうでしょう。
タイトルのファントムは音響装置の呼称なのですが音はタンカーに偽装しても方向からバレそうに思えますし秘密兵器というにはちゃっち過ぎますね。
レッドオクトーバーや007とは予算が違い過ぎるのか、肝心の潜水艦同士のバトルも無いわけではないが迫力に欠け凡庸、活劇より老艦長(エド・ハリス)の人間性にフォーカスが当たりすぎで湿っぽいし、アメリカを賞賛、擁護するセリフは嘘くさい、まあアメリカ映画だから仕方ないですね。
艦長を発作が襲うのだが潜水艦乗りにてんかんの人が多いのは爆雷攻撃の轟音によるトラウマと聞いたことがある、狭い艦内はリアリティがあるのだがミサイル担当が閉所恐怖症では乗船自体が無理、カナリヤは良いとしても犬まで必要でしょうか、下手に気を揉ませる小細工は勘弁してほしい。
肝心の艦内の反乱シーンも敵の人数が読めないし、KGBの悪役(デビッド・ドゥカブニー)がエドハリスに端から貫禄負けしているので緊迫感が薄い。
実際のK‐129は深海に沈んだので生存者はいない、最後のデッキの上の整列はゴーストという設定も湿っぽいが、実際の乗組員の遺体を回収した時のビデオがソ連に贈られ遺族に見せられたという逸話が残るので、第三次大戦の危機を身を挺して食い止めてくれた英雄たちにせめてもの礼を尽くすと言うことでしょうか・・。事実とすれば実に恐ろしい、キューバ危機を凌ぐ戦慄のエピソードですね。