「調和を見出すということ」25年目の弦楽四重奏 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
調和を見出すということ
亡くなる半年前のベートーベンが全7楽章を途切れるとこなく演奏することを指示したという弦楽四重奏曲第14番作品131。
途切れるとこなく演奏するということは、曲の途中各楽章の合間に調弦することが出来ず、徐々に狂ってくる音程の中で調和を見出さなければならないという難曲だ。
結成25周年の演奏会でこの曲を演奏する予定の弦楽四重奏団フーガも、楽団最年長のチェロ奏者ピーターの突然の引退宣言によって、長年尊敬と信頼で結ばれていたはずの絆、調和に狂いが生じる。
演奏する曲の難しさと軋み出す楽団内の人間関係がシンクロするという設定が秀逸。
途中で調弦出来ない曲のように、思いがけない出来事によって運命を狂わされても、人生は立ち止まることは出来ない。
狂った音程の中で何とか調和を見出さなければならないのだ。
突然の病で演奏家としてのキャリアに終止符が打たれるという運命を静かに受け入れようとするピーター。
父親のように慕っていたピーターの引退に動揺するジュリエット。
これを機に、“第二”ではなく、“第一”に、主役になりたいと願うロバート。
音楽の為に諦めてきたことに思いを馳せるダニエル。
それぞれを演じるクリストファー・ウォーケン、キャスリン・キーナー、フィリップ・シーモア・ホフマン、マーク・イバニールのアンサンブルも素晴らしかった。
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