「北野と千葉と少年誌」ザ・レイド GOKUDO ゼリグさんの映画レビュー(感想・評価)
北野と千葉と少年誌
北野映画が好きだ。
暴力を、感傷的ではなく極めて冷徹な視点で描いているのが良い。
その行き過ぎた暴力は時に、コメディにすら見える事もある。
特に「その男、凶暴につき」はたまらない。
千葉真一の映画が好きだ。
カンフー映画も好きなのだが、ブルース・リーとはまた違う「格闘の極意」を見せてくれる。
だが、間違いなくブルース・リーと同様に世界へ誇れる「格闘家」であり、その影響は計り知れない。
僕のお気に入りは「激突!殺人拳」だ。
少年漫画、特に少年ジャンプが好きだ。
色々とジャンルはあるが、やはり王道のバトル漫画が良い。
個性的なキャラクターが武器や必殺技を使い、またはその体ひとつで、コマの中を縦横無尽に動き回る。
その「迫力満点の芸術」は世界を魅了している。
それらが好きな僕にとって、この「ザ・レイド GOKUDO」は、完璧以外の何物でもない。
インドネシア映画でありながら、これら全ての「日本産」的な要素を詰め込み、一本の作品にしている。
世間的には、前作「ザ・レイド」の評価の方が高い。
それは当たり前だろう。
密室からの脱出とカンフーアクションの融合という、その作品独自の設定が評価されているのだ。
だが、僕からすると本作の方が、製作陣が本当にやりたかった事のように思える。
ただ好きな要素を好きなだけ詰め込んだという感じが、ひしひしと伝わってくる。
そして、その「好きな要素」は完全に僕のツボに入った。
北野映画のような、ヒリヒリとした暴力にまみれた世界を舞台に、ブルース・リーや千葉真一の後を継ぐ「格闘家」が、潜入捜査官として少年漫画から飛び出してきたような「ハンマー女」や「バット男」や「ナイフ使い」といった個性的な殺し屋たちと、文字通りの「死闘」を繰り広げるのだ。
僕にとっては退屈をする時間などなく、格闘映画としては類を見ないような、150分という長い上映時間も、あっという間に過ぎ去ってしまう。
まずアクションの見せ方が上手い。
どこで誰が何をしているかが、非常に分かりやすく撮られている。
そんなの当たり前じゃないかと思われるかも知れないが、近年の格闘アクション映画では、下手な編集のおかげでアクションが台無しになっていて、見るに堪えない作品も多いのだ。
僕が気に入っているのは、やはりナイフ使いとのラストバトル。
このシーン、僕からしたら全く気が知れないが、レンタルなどのR-15版では、殺陣がかなりカットされている。
R-18版のバトルは凄まじく、まさしくただの「命懸けの殺し合い」であり、他の作品に使われる「死闘」という表現が生温く感じてしまう。
この戦いこそ「死闘」と呼ぶべきだろう。
前作にもある、格闘スキルがあるからこそ感じさせる泥臭さのようなものが、僕はどうしようもなく好きなのだ。
痛みを体感できるアクションというものが。
確かに、ストーリーに突っ込みどころはあるだろう。
ただのカンフー映画じゃないかと、一笑に付すのは簡単だと思う。
そこらのアクション映画と変わらないじゃないかと。
チープだと思う人もいるだろう。
だが僕にとっては「完璧な映画」であり、前作すら替わりにならない、理想的な「格闘映画」なのである。