くじけないでのレビュー・感想・評価
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ストーリーは平坦なのにあっという間
皆演技が上手い。
特に武田鉄矢が、本当にしょうもないおじさんのキャラクターを気持ち良く演じていて、実際にいたら溜め息ものなのに観る側が嫌いにならないように上手く演じていた。
家の周りを彷徨きながら、長い木の棒を振り回して言い訳する姿は子供そのもので思わず笑ってしまった。
あと、回想シーンで、防空壕の中で幸せだと泣く貞吉さんのセリフで自然と泣けてしまった。
孤独じゃないって幸せな事なんだなぁ、と噛み締める事が出来る貴重な瞬間だった。
俺は、柴田トヨって人をほとんど知らなかったんだなぁ。
映画「くじけないで」(深川栄洋監督)から。
90歳から書き始めた詩人、柴田トヨさんは
もう詳しい説明はいらないだろうが、
その役を八千草薫さんが演ずるとあって、
期待に胸が膨らんだことを、事前に記しておきたい。
作品中にタイミングよく挿入される詩は、
何度耳にしても、温かさを感じる素敵な詩である。
しかし、今回私が選んだのは、柴田トヨさんの息子、
武田鉄矢さんが演じた、柴田健一の台詞。
母親の詩を丁寧に整理しながら、読み返していくうちに
あることに気づき、込みあげてきたものがあった。
「俺は、柴田トヨって人をほとんど知らなかったんだなぁ」
そして「俺が知ってたのは、ごく一部だったんだなぁ」
この台詞は、本当によくわかる。
自分も息子として、母親のことをよく知っていたつもりが、
実は、若い頃のことも含め、ほとんど知らないことばかり。
息子(娘)だから、親のことは自分たちが一番知っている、
それは、間違いだと気付いた。
親は子どものことを知っているかもしれないが、
子どもが親を知っているか、と尋ねられたら自信がない。
意外にも、嫁であったり孫であったりこともある。
もう少し、親のことを知ろうとしなくちゃいけないな、
たった一人の親なんだから。
亡き母に会いたくなりました。…>_<…
どんな時でも、我が子を信じる。偉大な母の愛情物語。幾つになってもおばあちゃんと呼ばれたくない気持ち、分かるなぁ。青年医師に会う時は、お化粧するトヨさん。若々しく柔らかい心が、あの詩を生んだことが分かりました。母と離れて暮らしている方、母を亡くした方、泣けます。
人生まだまだ。
柴田トヨさんの詩集は何篇足らずしか読んでいないが、
当時98歳のトヨさんに「くじけないで」なんて言われたら、
とてもこの歳でくじけてなどいられない。
彼女がどんな人生を過ごしてきたのか。
書き溜めた詩を息子の薦めで刊行できたことは素晴らしい。
何かの功労者というわけではないし、変わった人生を歩んだ
わけではないトヨさんの、語りかける口調はいつでも優しい。
普通に生きているだけで、様々な歴史の波を体験した時代。
夫の死から降順に過去を回想していく描き方をしている。
現在を起点に考えると、過去の幸せと苦労が背中合わせに
映され、優雅な口調のトヨさんが「おしん」とダブってくる。
そしてあの時代に読み書きができるということは、相応の
教育を受けることができた家柄の人々ということを証明し、
その文才は(モノになるならないは別として)彼女の息子に
受け継がれた…ということになる。
もちろん仕事としてそれがモノになればいうことないが、
人生そうは巧くいかない。大事に大事に育てたはずの
息子の健一は定職に就かず、ウサギ小屋の掃除と競輪通い。
デキのいい嫁(蘭ちゃん)の気苦労はかなりのものだが、
それでも健一を見捨てない、母親と嫁の優しさは共通する。
バカがつくほど愛おしいとはこういうことか~なんて
私にとっては誰になるんだろう?と思いながら見つめていた。
だけどどんなに真面目に働いても、
いまのご時世、あんな風にクビを切られちゃたまらない。
労働者を育てない会社に未来なんてくるのかよ、と思う。
でもどうか、くじけないで。
「夢は 平等に見られるのよ」
「私 辛いことが あったけれど 生きていてよかった」
本当に、本当にその通りです。何があろうと生きてて何歩。
(しかし金八先生はどの役をやっても説得力があるわねぇ^^;)
菩薩様
主人公が素敵すぎます。
各時代を通して理想的な娘であり、理想的な嫁であり、理想的な母であります。
特に老成してからの慈愛は菩薩様レベル。
おばあちゃんなんですが、一人の女性としても十分過ぎるほどに魅力的でした。
流石は八千草薫と言うべきでしょうか?
その八千草薫さん演じる柴田トヨの若かりし頃を演じるのが檀れいさん。
もしかして宝塚繋がり?
どちらも素敵なんですけどね。
それに違和感も無いです。
芦田愛菜演じる少女時代はまるで『おしん』のようでした。
そのおしんと同様に苦労を重ねる訳ですが、苦労を重ねるほど優しさも増していくように見えました。
そんな彼女の作る詩は優しさに溢れていて、読む者に直接語り掛けてくれるみたいに胸を打ちます。
妙な技巧に拘らないからこそ、実に素朴で素直な気持ちが胸を打ちます。
年老いた母と息子の交流を描いた自費出版が原作の実話、というと『ペコロスの母に会いに行く』と同じですが、其々切り口が違っていて観比べて見るのも面白いかと思います。
大ベストセラー詩集の誕生秘話には更なる感動が有ったなんて信じられる?
私はこの映画を完成披露試写会で観た訳ではないので、当然試写会場に監督や出演者が来ていたわけではないが、映画終了後、試写会場では拍手の嵐が起きた。
本作は2時間8分の長尺映画だ。かなり集中力を要する作品なのかもしれない。
一緒に観た友人の口からは、少し長かったと言う言葉が漏れた。
しかし、私は初めから最後迄、よく笑い、よく泣いて、存分にこの作品を楽しむ事が出来たのだ。
認知症を患ったご主人を見送り、その後ご自身も緑内障の手術を受けたヒロインの柴田トヨさん。
術後一時的に、長年連れ添ったご主人を亡くされた心労と環境の変化に加えて、手術に因る体調の変化も重なり、認知症を併発しそうになる。
そんな母の様子を心配した、一人息子の健一さんが元気を取り戻す手段として、トヨさんに詩作の提案をすると、トヨさんもこれを受け入れ、以来トヨさんの新しい生活が始まる。
そして数年の後、健一の妻静子さんの提案で、トヨさんの詩集が自費出版される迄の過程と共に、トヨさんの幼少期から、今日までの、その生涯が丁寧に本作では描かれていく。
私も50代になり、体調の衰えが出て、公私共に心労が重なって来た頃、ふとした事から、書店で手にした、柴田さんの詩集「くじけないで」に、励まされた一人だった。
その詩集からは、映画で知った彼女の生涯を感じさせない、明るく、前向きな作品が綴られていて、詩集から元気を沢山もらった記憶がある。
そんな彼女の前向きな、明るい性格の詩集だからこそ、異例の大ベストセラー記録を創り上げる詩集となったのでしょう。
きっと日本には大勢の愛読者方がいらっしゃると思う。
その詩集の中からは、息子の健一さんが、今で言うフリーターの走で一人息子の健一さんの事で御苦労をされていたとは、想像も出来なかった。
リリーフランキーの「東京タワー」を観た時の様に、本作も初めから最後まで、笑いと共によく泣かされた映画だった。「東京タワー」以上に観ていて、号泣してしまった。
そんなトヨさんの波乱万丈の人生を清々しく演じていたのは、何歳になっても、少女のような素晴らしい魅力を残している大ベテランの八千草薫。それに加えて、放蕩息子と言っては申しわけないが、健一を武田鉄矢が面白味たっぷりに演じていた。そして、妻静子を伊藤蘭が絶妙な掛け合いの芝居を展開していた。
平凡な生活でも日々感謝と共に、一瞬一瞬を大切に、丁寧に生きている事の素晴らしさを本作も、詩編同様に教えてくれる。ご家族揃って観ても楽しめる今年一番のお薦め作品でした。
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