「90歳、人の鑑となる」くじけないで 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
90歳、人の鑑となる
90歳を過ぎてから詩作を始めた柴田トヨの半生と家族とのドラマを描いた感動作。
この人の事はTVか雑誌で紹介されていたのを見た記憶あり。
ステレオタイプのベタな感動作かと思ったら、何だ何だ、意外に良かった!
何と言っても、柴田トヨさんに頭が下がる。
90歳も過ぎると、ぶっちゃけ人生ももう終末。
しかも、目に病気も…。
体力的にも精神的にもこのままフェードアウトしてもおかしくない時に始めた、人生最後の華。
人間、幾つになっても始められる。
単なる美辞麗句と思っていたこの言葉を、まさしく体現。
人生に悩む、見出だせない、生き甲斐を感じない、全ての人たちにトヨさんの姿を見せ贈りたい。
詩の数々は詩人が詠むような名文ってほどではない。
が、その文からは温もりを感じる。
詩作の源は、歩んできた波乱の人生、家族や他者への思い。
人生の酸いも甘いも経験した年長者からの労り、エール、優しさ…。
明治、大正、昭和、平成…4つの時代を生きた柴田トヨさん。
幼少時を芦田愛菜、若き日を檀れいがそれぞれ演じているが、圧倒的に八千草薫の品のある演技に魅せられる。
その息子、健一。
昔っから迷惑かけっ放しで、あの歳になってあの冴えなさはイタイ大人だが、表には出さないが母親思いで、詩作を勧めたのも息子。
武田鉄矢が、役者デビューとなったあの名作で演じた役柄のその後を彷彿させる、ウザいけど憎めない奴。
伊藤蘭がダメ夫と高齢の義母を支えるしっかり者の嫁で好助演。
これら息子夫婦や亡き夫との出会い~結婚の家族愛、主治医(上地雄輔、好演!)やある父子家庭の父娘などのサブエピソードも効いている。
劇中で詠まれた詩で気に入った一節が…
“好きな道なら、でこぼこ道だって歩いて行ける”
そんな道(人生)を歩んで行きたい。