「垂れても剥げても二人は一緒。」ビフォア・ミッドナイト ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
垂れても剥げても二人は一緒。
ビフォア・サンライズ、~サンセット、に続き今回はミッドナイト。
驚いたことに二人は結婚し、双子の女の子を儲けていた。
ときめく出逢いも夢のような再会も今回はまったく描かれない^^;
冒頭で前妻との息子を空港まで見送り、彼らはギリシャへと向かう。
せっかく友人の招きでバカンスを楽しみにきたというのに、二人は
車中にいる時から口喧嘩ばかり。しかし、これが夫婦の現実!だと
認識できる年代には大ウケの作品である。全くもって見事な演出。
40代の中年夫婦ともなれば、やれ恋愛にときめいている暇などない。
気がかりは前述の息子のこと、仕事のこと、娘たちのこと、引っ越し、
次から次へと問題は変わるが、二人のテンポはまったく変わらない。
とにかく監督と主演二人の息がピッタリなことが分かる。
長台詞がアドリブとも思えない、ひょっとして本当の夫婦か?と思う
ほどのリアリティが、二人の容姿、振舞い、態度、台詞から湧き出る。
特に頷けたのがホテルまでの道のり、やや柔和な顔になった二人が
手を繋ぎ「アラ?私たち、仕事と子供以外の会話をしているのね!」
と驚くシーン。ホテルに到着し愛し合うつもりが、また口喧嘩になる。
そこでケータイが鳴ってしばらく場面が続くのだが、その間セリーヌは
上半身だけ丸出し!(爆)J・デルピーの垂れた40代の身体が超リアル。
確かに夫婦で同室にいれば裸になって歩き回ることなど何てことない。
もうそんな恥じらいもクソもないんだぞ。がこの一場面で愉快に表現。
ジェシーもどうなの、そのだらしないシャツの入れ方は!狙っている
のだろうが、そんな細かい表現が巧すぎて苦笑いと同時に愛着が湧く。
こんなくたびれた二人など見たくない。と思った人も多いだろうが、
十中八九誰もがこうなる。惚れた腫れたの時期を過ぎ、互いの欠点を
否応なく見せつけられる生活が続き、妻は過去の話を持ち出して夫を
責めまくる…このリアルに対する夫の最終手段が小粋でまた憎めない。
何があっても、一緒に生きていく意志は変わらない。
だからこそ、大好きな人と結婚すべきなのだ。覚悟はそこで決まる。
今でも私を誘う?の愚問には大笑い。でも聞いちゃうんだよね、絶対。