「最後の者たちの国で」マッドマックス 怒りのデス・ロード 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
最後の者たちの国で
鑑賞から丸1ヶ月経ってようやくレビュー。
うーむ、公開から1ヶ月足らずでレビュー300件超って恐ろし。
流石に全てのレビューを読んだ訳じゃないが、もうレビュー書いても新味のあることは書けない気がする……。
と、逃げの一手を打った所でレビュー開始。
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まだ2015年も半年近く残っている訳だが……あのぅ、
もう今年一番のアクション映画だと言い切っちゃって良いんじゃないんすかねコレ?
すっげえ! ムチャクチャ燃えた!!
ストーリーはシンプルだ。恐ろしくシンプルだ。
最終戦争後の世界をひとり生き延びてきた男が、暴君の
手から逃れて新天地を目指す女たちの手助けをする。
以上。ホントにそれだけ。あとは延々カーチェイス。
だが、シンプル=内容が薄いということには全くならない。それどころかこの映画は、
『凝ったシナリオ無しでも映画はこれだけ面白くできる』というある種の証明だ。
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安息の地を求め、ひたすら走り、ひたすら闘い、ひたすら逃げる。
たったそれだけの物語に、どうしてここまで心を動かされるのだろう?
故郷の夢を打ち砕かれて砂漠でひとり泣き叫ぶ女に、
植物の種を抱いたまま死んだ老婆の安らいだ表情に、
出会ってまだ1日か2日ぽっちの恋人たちの別れに、
そして、最後に交わされる2人の戦士の頷きひとつに、
どうしてこんなにも胸が熱くなるのだろう?
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スプレンディッドの死の場面。
マックスが親指で『よくやった』のサインを出した直後、
マックスに撃たれた傷からの血で足を滑らせ、彼女は死んでしまう。
きっとマックスはあんな因果な死の場面に何度も何度も遭遇してきたのだろう。
自分の力不足、あるいは自分のミスで死んだ人間を山ほど見てきたのだろう。
死と狂気のみが支配する熱砂地獄でマックスはフェリオサに語る。
「分かってるはずだ、希望を抱くのは間違いだと。心が壊れたら、あとは狂うしかない」
だがそんな無慈悲な世界においても、
いやそんな無慈悲な世界だからこそ、
人はほんのわずかな心の拠り所を大切に大切に胸に抱いて生きる。
とうの昔に心が壊れてしまったマックスですら、
人としての良心や、過去を贖いたいという希望を完全に棄て去ることはできなかった。
この映画は過酷極まりないハードアクションだが、僕にはそれと同時に
『どれだけ過酷な環境にあっても人間は希望を見出だす/あるいは希望を棄て切れない』
という、愚かしくもいとおしい人間という生き物の考察であるようにさえ思えるのだ。
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耳タコだとは思うが、アクションの凄まじさについても書かずにはいられない。
生身の人間が体を張っているアクション映画は、
それが過酷であればあるほどに、キャラクターの血と肉が伝わるように僕には思える。
スクリーンの向こう側にそのキャラクターが存在しているように思える。
本作では極力生身の役者がスタントを演じたと聞いているけれど、
ハイオク血液袋マックスがカーチェイスの“特等席”でブン振り回されるシーンやら、
キャストのすぐそばで次から次に爆発炎上&キリモミ回転する車両やら、
それこそ作り手の正気を疑いたくなるレベルの壮絶さ。
この決死のアクションがあってこそ、この映画のドラマは心に迫るものになったのだと思う。
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フェリオサ率いる女性キャラ達もしっかり個性が出ているし、
イモータン・ジョー率いるイカれたキャラ軍団もインパクト強すぎ。
盲目の“死の天使”や、ウォードラムならぬウォーエレキ(爆)とかはユーモアなのかマジなのかもう分からん(笑)。
他にも色々書きたいが、長くなるのでこの辺でやめておく。
“ウォーエレキ”といういい加減な造語を書けた時点で僕はもう満足だ。
以上!
ムチャクチャ面白かった! レビュー終わり!
<2015.06.20鑑賞>
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余談:
『マッドマックス』シリーズは1,2作目は観てるが、
マックスの妻子が賊に轢き殺された、という過去設定の説明すらハショる潔さはスゴい。
編集しながら「過去作知らない人大丈夫かな……」と不安に駆られそうなもんだけどねえ。
余談2:
レビュータイトルは好きな小説のタイトルから拝借。ビミョーに漢字は違う。
内容はずいぶん違うのだけど、フェリオサ帰郷後の夜のシーンで相通じるものを感じた次第。