「エンタテイメントの王道」マッドマックス 怒りのデス・ロード げんさんさんの映画レビュー(感想・評価)
エンタテイメントの王道
いろいろあって,世界が崩壊し
生き残った市民が残りの資源,石油の井戸や製油所,水源を占拠し
砦のようなものを作って派遣を争っている社会が舞台.
日本的に観点に言えば,「北斗の拳」の世界だ.
マッドマックス2でも表現されていたディストピアの
続きの世界である.
そこでは人間の,古い価値観に基づいた性質がむき出しになっている.
支配者が資源を独占し,子どもを作るために妙齢の女も支配者が独占している.子供を持てるのは支配者のみに許された特権であることや,土壌の汚染によるのか,障害を持った子供が多いことを示唆する表現もある.
日本人からすると,そもそもこういった社会は受け入れられないので,好き嫌いがあると思う.
しかし,西洋の文明が現在の世界を支配しているのであるから理解すべきと思う.これが彼らの価値観なのである.
実は,こういった背景を論じることはこの作品にはふさわしくない.
この作品はまず,絵として立っている.
ひとつひとつのカットが,ジョージミラーの脳内イメージを具現化したものであることが容易に想像できる.
すべての瞬間で,製作者の意図を感じる.暴力,疾走,犠牲,挫折
見事にそれらは表現され,スクリーンに映し出される.
「マッドマックス」シリーズではあるが,主役のマックスやラスボスの支配者イモータンジョーの印象はあまり強くない.
脇役設定の女戦士フィリオサ,子産み女のスプレンディド
ウォーボーイズのニュークスなどキャラの立ちすぎた人たちが多すぎるのである.彼ら一人一人に十分な見せ場が用意され泣かせる.
砂漠に風が吹く荒廃と緑との対比,疾走感など
まさに神は細部に宿ると言っていい,ディテールへのこだわりが全編を通して感じられた.
まさに映画館でしかこの迫力は伝わらないのではないか?
ジョージミラー監督は70歳ということであるが,
すごすぎる.次回作が楽しみである.
世界観として肯定したくないという思いからかなり減点したが,
それはスクリーンを見ている間は関係ないことである.