「絶賛に値する出来映え。より良く生きたいという根源的パッションを呼び覚ます作品。(追記あり)」マッドマックス 怒りのデス・ロード image_taroさんの映画レビュー(感想・評価)
絶賛に値する出来映え。より良く生きたいという根源的パッションを呼び覚ます作品。(追記あり)
世の中には愛すべきバカ映画というのがあって、これもそうなのだろうな…という期待と先入観を持って劇場に足を運んだのだが…。確かにバカ映画の要素は多分にある。しかし、これはただ単にハイテンションになれるバイオレンス・アクションと言い切れる作品ではなかった。パッションに満ち満ちた、壮絶な反骨精神を高らかに歌い上げる、非常にエモーショナルなアクション・ドラマであった。人々を蹂躙する独裁者に対して、より良き生を求め自らの意志を貫こうとする人々の怒りと悲しみに心が震えるし、生き抜くことだけしか残されていないマックスが止むに止まれずに手を貸していく顛末は大いに感情移入するところである。
主演のトム・ハーディよりも強い印象を残すのはシャーリーズ・セロン(ストーリー上でも主演と言って差し支えないだろう)の方だが、私はあえて地味な演技に徹したトム・ハーディのさりげない立ち居振る舞いに賞賛を送りたい。今作でもしメル・ギブソンが演じていたら、前に出過ぎてしまい、こうはならなかったであろう。
役者の台詞に頼らず、執拗なまでのアクションによって激情を表現したジョージ・ミラー監督には最大限の賛辞を送りたい。
(次作を観てからの追記)
『マッドマックス フュリオサ』を観て…印象が変わったというか、理解が更新されて味わいが深くなったシーンを2つ。
①フュリオサが故郷の生き残りに出会い、故郷が汚染されて失われたことを知らされ、美しい砂漠の中で悲しい叫びを上げるシーン:故郷が失われた悲しみの発露というよりも、母との約束を果たせなかったことへの痛みが突き上げるシーンとなって、より一層涙を誘うシーンとなった。
②イモータン・ジョーにとどめを刺す直前に「Remember Me?」と問うている(正直どういう意味で言っているのか分からなかった)が…『フュリオサ』の方でディメンタスにも同じように問いかけるシーンがあり、それをリフレインするかのように、フュリオサを知らないはずがないイモータンに対して、「将来の子産み女として私を生かしたあの時の小娘だけど、覚えてる?」という意味であったことが分かる。短い鋭い一言だが、これもまた随分と印象が変わって強く響いた。