劇場公開日 2013年7月27日

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「ずいぶんと日本、日本人にやさしく描いている」終戦のエンペラー トコマトマトさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ずいぶんと日本、日本人にやさしく描いている

2013年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

知的

某日、松竹試写室で鑑賞。

宇宙人ジョーンズがマッカーサーを、歌舞伎女形の片岡孝太郎が昭和天皇をそれぞれ演じ、彼らを真ん中に据え、それなりに緊迫感と、「日本に民主主義と終戦(平和)をもたらしたのはアメリカだぜ!」的な上から目線と偏見、さらにハリウッド的勘違いも随所にみられるような映画、と思っていたが、尺も1時間40分あまりであっさりとした内容であった。
そして、ずいぶんと日本にシンパシーを持って制作してくれた映画と受け取られた。

これって、ジャパン(サントリー)マネーをたっぷりと手にしているT・L・ジョーンズが影響している? なんて思ったりもしたが、ジョーンズも淡々とまじめに、歴史上の人物を演じていて納得の作品である。

ドラマとしては、実在した米国人准将と日本人女性との悲恋が歴史的事実とは別に軸となっており、それが物語を膨らませている。エンターテインメントなんだからそれはそれでOKだろう。
日本人俳優は、西田敏行、伊武雅人、中村雅俊、夏八木勲といった有名どころがしっかりとした芝居をしてくれており、これも納得。

プレス(報道資料)によると、皇居でのロケもしているのだとか。二重橋前とか撮影協力したってことなのか…。
まあ、昭和天皇の戦争終結への思いをあそこまで肯定的に描く内容なら、宮内庁もOKしたのもわかる…。

評者は、昭和40年代の物心ついたころから、母親に「日本は戦争に負けてよかった。戦前の天皇制が続いていたら大変なことになった…」という呪詛のようなつぶやきをずっと聞かされて育った。
母親がそうした共産党シンパのような人間だったので、長らく、反皇室、反体制的な考えを持っていた。

しかし、社会に出て、20年以上たつと、そんな考えもずいぶん薄れてしまった。

この映画でも描かれているとおり、「先の大戦」を終結したのは昭和天皇の存在が極めて大きかったという考えに今は首肯するものである。

そうした視点からこの作品を見ても、日本にとってはありがたい内容のような気がする。
日本が大戦中に行った侵略行為も、それは欧米列強のフォロアーでしかなかった、という点が近衛文麿の言葉ではあるが、訴えられているのだから…。

昭和史に関心がなくても、日本に生きている人間なら「見ておくべき作品」と言っておきたい。

町谷東光