「当時の民俗、風俗を上手に描いたと言ったら言い過ぎ?」タイピスト! 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
当時の民俗、風俗を上手に描いたと言ったら言い過ぎ?
フランス映画祭2013の最高賞の観客賞を受賞。
舞台は1950年代のフランス。戦後と言う時代背景が上手く描かれています。先ず出て来るのは、当然、先の大戦の話。ルイがレジスタンスだったとか、ボブがアメリカの空挺隊員で、降下した先でマリー(ベレニス・ベジョ)に出会って結婚したとか。そりゃそうだよね。まだ10年くらいしか経っていないんだから。また、車のシーンが当然有るんですが、一台だけではなく、街ナカを走る車群のシーンも実現。よくあんな昔の車を集めたよなぁと思います。
さて、そんな当時の女性憧れの職業は秘書。これも、1950年代という時代を表していますね。まだまだ女性の社会進出の途上で、女性が就くことが出来る職業といえば、秘書位だったということを示しているんだと思います。それと合わせて興味深いのが、ローズの最初の下宿の女主人?寮監?寮母?の「真面目な(娘さん)」と言う言葉。まだまだ時代的には、女性に貞淑さとか、お淑やかさとかと求める時代で、(フランスですら)それが変では無かったということなんでしょう。
それと対比できるのが、ローズがルイの家族たちの前に“婚約者”として連れだされてきた時に、思わずルイの父親に対してローズが楯突くような事を言ってしまったこと。これは、上記の“真面目な”とか“貞淑さ”とか“お淑やかさ”とは、対極にあるような態度だし、行動。でもそれが、その後の時代にウーマン・リブやフェミニズムが巻き起こることを暗示すると言ってしまうと、言い過ぎでしょうか?あ、それと、この物語では、ローズの特訓のためではありますが、ルイが家事をしていることも、その後のダイバーシティを暗示しますよね。
ところで、この作品。タバコを吸う場面が、沢山出てきます。ジブリアニメに物言いを付けた某学会に言わせると、この映画は、どうなんでしょうかね?
とか何とか、時代背景がどうだとかこうだとか小難しいことを言ってしまいましたが、この1950年代の秘書たちの憧れの一つのタイプライター早打ち大会描いたのがこの作品なんですが、作中とはいえ、盛り上がりが凄いし、心理戦なんかもあって、まさに競技。中々興味深いですね。日本で言うと、そろばん大会みたいなものでしょうか?
しかし何と言っても、この作品は、デボラ・フランソワに尽きますね。フランスの片田舎から出てきたドジで間抜けな(いや、パクってないですよ)娘を非常に上手く演じています。ちなみに、デボラはローズを演じる為に、一日2~3時間ほどの訓練を3ヶ月ほど続けたそうです。
そのローズの雇い主で、タイプライター早打ち大会に向けて特訓する鬼コーチのルイ・エシャールを演じるのは、ロマン・デュリス。自分の心を隠して(って言うか、隠れてないけど)ローズに向かう様を上手く演じています。
不器用な男女の恋物語・・・ですかね。フランスの男も、チャラ男だけではないという事ですかね。