「女は幸せだと微笑むものよ。」タイピスト! さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
女は幸せだと微笑むものよ。
女性の人気職業NO1が「秘書」の、1959年のフランス。ローズ(デボラ・フランソワ)は保険会社の秘書に採用される。しかし、事務的なお仕事はまったくできない。タイピングを除いては。そのタイピングの早打ちに目を付けた上司のルイ(ロマン・デュリス)は、解雇しない替わりにタイピング早打ちコンテストへの出場を命令する。
主役ローズのキュートなどじっ子ぶりと、偏屈な年上上司ルイのやりとりは、なんだかヘップバーンの映画を彷彿とさせます。そういえば、恋をしてどんどん綺麗になっていくローズのばっちりアイラインメイクは、ヘップバーンに似てるような気もする。
そしてこのルイのキャラは「アパートの鍵貸します」のジャックレモンに似ています。思い出してください!ジャックは、保険会社勤務でしたよ。本作には随所に、名作のオマージュが見受けられます。そこも見所の一つです。
早打ちコンテストで優勝する為に、ローズとルイは毎日トレーニングを続けます。その課程で、もちろん愛が芽生える訳です。そしてとうとうフランス大会決勝戦前夜、ラブい関係に。
このちゅーシーン、びっくりしました。ルイがローズの滑らかな頬に触れ、一瞬躊躇います。そして、何もせず去って行く。えー!
「置いてくの?私、初めてじゃないのよ」と、ローズ。
おいおいおいおいおい。ルイー!ちょ、女の子にこんなこと言わせんなよなー。しかもルイの返答は、こうです。
「じゃ、それは教える必要ないな(タイピングはルイが指導していたので)」
さーいーてー。と思ってたら、ローズがルイを平手打ち。返す刀で、ルイがローズをひっぱたいてーの、激しくちゅー。えー!?
で、結果、ローズはフランス大会で優勝します。
「愛してる」
と、告白するローズを抱きしめ、苦み走った顔のルイ。あれれれれ?これは-、怖じ気づいたフラグ立ってますよ?
優勝するとローズは、タイプライター社のCMに出て人気者になります。しかし、そんなローズと距離をとるルイ。かたやローズは、タイプライター社の馬鹿息子とちゅーしてみたり。会社のタイピング指導員のおばさんに、辟易したりしてる。そんな悶々とした状態の中、全国大会へ出場します。
もちろん、ルイは苦悩してます。元カノ(ベレニス・ベジョ)の所に行って「何故、俺を捨てたのか?」 と、一番やっちゃいけないことを、充血した目で訴えます。元カノは結婚して、子供二人と幸せな生活を送っているのに。
元カノ「貴方は戦争に行った。何も約束せずに。結婚だってすることができたのに」
ルイ「もし戦争で死んだら、君は寡婦になる」
元カノ「でも貴方は生きて戻った。そして二番目(元カノの夫の次=ただの友人)になることを望んだ」
そこでルイはローズを愛しているが、死ぬほど怖いと告白する。戦争経験が影響してるんでしょうね。ローズはフランス大会で優勝した時、表彰台で幸せそうに笑ってた。輝くような笑顔をルイに向けたと。
「ボブ(元カノの夫)の傍で微笑んでいる、君(元カノ)みたいに」と言うルイ。
そんなローズを、ルイは幸せにする自信がないのです。
そこで元カノの台詞です。
「女は幸せだと微笑むものよ」
貴方は、既にローズを幸せにしてるってことなんです。その言葉を聞いて、ルイは全国大会の会場に向かいます。何故か元カノの旦那と。このボブがまたいい男なんです。
さて、二人の恋の行方はどうなるのでしょうか?そして全国大会での勝敗は?ラスト、いい台詞が沢山あるので、最後まで語りたいけど。うー、止めときます!
久しぶりにラブコメらしい、ラブコメを見ましたよ。最近のアメリカのラブコメは(シモの方に)過激になってるので、たまにはこんなキュートなラブストーリーに微笑みたいものです。あと、タイピング大会は迫力あるし、なにより50年代ファッションがお洒落なんです。
そしてふと考えました。私って夫の傍で微笑んでるかな?