ある愛へと続く旅のレビュー・感想・評価
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【”首筋の薔薇の刺青。”母と息子の隠された関係性をボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を背景に描いた、重いが、切ないヒューマン・ドラマ。女性の母になりたい気持ちが男乍ら身に染みる作品である。】
■ユーゴスラビアのサラエボ。
イタリアからの留学生ジェンマ(ペネロペ・クルス)は、アメリカ人カメラマンのディエゴ(エミール・ハーシュ)と恋に落ちて結婚。
だが、ジェンマの卵子の問題があり、子宝には恵まれなかった。
やがて、ボスニア紛争が勃発。戦場へ向かったディエゴを追って、ジェンマも人道支援活動に加わる。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
ー 序盤の今は亡きディエゴの写真の展覧会で、ジェンマの生意気盛りの息子ピエトロがある写真を見て、”これ、父さんの?”と問うシーン。
ジェンマはさり気無く”違うと思う”と答える。
このシーンが、ラストにズシンと効いてくるのである。-
・ジェンマが若き時に出会ったディエゴ。二人は恋に落ち、戦場カメラマンであったディエゴと共に、ジェンマはサラエボへ。
ー 今作でも当時のニュースで出演しているボスニア・ヘルツェゴビナの政治家であったカラジッチは、今でも終身刑として服役している。
当然であろう。-
・だが、ジェンマには子供が出来ない。そして苦渋の決断。ニルヴァーナ好きのアスカに代理母を依頼するが、アスカは兵士に犯されて・・。
ー ニルヴァーナの憂鬱な”サムシング・イン・ザ・ウェイ”が流れる中、アスカの身に起きるであろう哀しき事が暗喩される。そして・・。-
・ジェンマはその事実を知りながら、”息子”ピエトロを引き取るのである。
ー そして、久しぶりに会ったアスカとの会話。
アスカが兵士たちに犯された後に、首筋に煙草で刻印を入れられるシーン。怒りで脳内が沸騰する。だが、それを薔薇の刺青で隠した男・・。-
<今作は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の愚かしさと共に、そんな中、愛した男の子を持ちたいと願ったイタリア女性の想いと、その後、時を経て彼の地に”息子”と共に訪れた”母”の姿を描いた重きヒューマン・ドラマである。
今作の様な作品を鑑賞すると、女性の強さ、逞しさと共に母性の底知れない強さを感じるのである。
併せて、ペネロペ・クルスの老けメイクも彼女の美しさを一切損なっていない事にも一言触れたい。>
愛に導かれ愛に辿り着く
異国の地で出会ったジェンマとディエゴが紆余曲折(ジェンマの結婚と離婚)を経て、ようやくジェンマの故郷で結ばれる。
二人は子どもを望むが、ジェンマの身体は妊娠が難しかった。
(もしジェンマがディエゴの子どもを流産していなかったら、彼女は別の男と結婚することはなかったのかもしれない)
ディエゴを繋ぎとめるためにジェンマは代理母によって子どもを持とうとするが…。
これは、ジェンマの側から見た物語。
しかし、ディエゴの物語もある。
父親が母親に暴力を振るう家庭環境に育った彼は、その父親の死をきっかけに写真を撮るようになる。
彼はジェンマとの生活の為に味気ない写真を撮り続けるが、二人が出会ったサラエボに戦火が迫り、いてもたってもいられなくなる。
(ここで彼の背中を押すのが、ジェンマの父親あることが面白い。)
そして、サラエボでの物語。
かつて二人を引き合わせたゴイコと、代理母を引き受けるというアスカの物語。
更に、現在のジェンマと息子ピエトロ、ゴイコとアスカの物語…。
登場人物それぞれの物語が重層的にひとつの物語を織りなす。
500ページ超という原作小説を脚本にするにあたっては相当苦労したそうだが、やはり(小説ならば感じないかもしれない)詰め込み過ぎの印象もある。
あくまでもジェンマが主人公というスタンスなので、ディエゴ、ゴイコ、アスカ、ピエトロ、そして幼子を抱えたジェンマの夫となりピエトロの父親となった大佐の思いを汲み取れきれていないように感じてしまう。
救いようがない
サラエボ紛争の話。哀しくて残酷で救いようがない。観賞後の不快感はこの上ない。性暴力シーンは目を背けたほどだった。世界中のどこかで同じような犠牲者が相次いでいるかと案ずると心が痛い。サーデット・ウシュル・アクソイの存在感と演技力が素晴らしい。長身の赤いロングヘアー、鋭い真っ直ぐな青い瞳。私の中で、ペノロペ・クルスを凌ぐ女優となった。彼女の出演作を今後チェックしようと思った。「人間であることが恥である」その台詞が今でも胸に刺さっている。非常にショッキングな内容で気持ちの遣り場に困った作品だったが、時間が経つにつれ色々考えさせられた。
時間軸の交差が有り、集中力を要する作品だが、感動は御約束の女子必見作
この秋観て凄く好きになった「42世界を変えた男」が勇気・希望・元気に満ち溢れる「動」の感動作品と評価すると、本作は歴史の渦と言う大きな運命の変化に翻弄されていく中で起きる家族を描いた「静」の感動に包まれる作品だ。
琴線に触れる、静かな感動を呼ぶ映画として、是非、一人でも多くの映画ファンに観て頂きたい作品がこの「ある愛へと続く旅」なのだ。
観賞後、不覚にも、後から後から涙が流れて、止まらなくなってしまった。
チェックイン人数もまだまだ少ないと言う事は、この作品の存在自体を知らないでいる人も沢山おられるのかも知れないが、もしも、チャンスが有るなら、この映画を観て絶対損はしない映画なので推薦したい!
何と言ってもこの映画の魅力は、第一番にヒロインであるジェマを演じている、スペインを代表する女優のペネロペ・クルスの魅力に因るところが大きいのだ。
しかし、彼女もデビューから20年も経過して、大ベテランの実力派の俳優だけれども、若い映画ファンの人達からみると彼女はもう既にオバサンのイメージがあるのかも知れない。私などは、熟女の年齢に差し掛かっている彼女は、若い頃もチャーミングで芝居も確かだったが、これからが女優として、本格的に魅力を発揮出来る時期なので、もっともっと楽しみな油の乗った最高の時期だと思うのですが?若い世代の映画ファンには、興味が薄くて、チェックインの人数が少ないのだろうか?
原作はマルガレート・マッツァンティーニの手によるベストセラー作品だが、原作本を読んでいないので、映画が、どこまで原作の香りを描いているのかは解りませんが、しかし、良く練られた脚本であり、大河ドラマと呼べる、力作だ。
特に女性の人にはお薦めの作品で、今後女性誌には必ず名の残る名作として紹介される事だろう。
映画を観て話を知ってしまったが、私も今からでも、原作も読んでみたいと思うくらいの壮大なドラマの感動作品だ。
この物語の、ヒロインのジェマが学生時代にバルカン半島に位置する旧ユーゴスラビアを訪れた事から物語が始まる。
彼女はこの旅で、ディエゴと言う青年と恋に落ち、その後、ローマで幸せな結婚生活を送るのだが、しかし、ディエゴはフォトグラファーである為に、やがて2人の出会ったユーゴスラビアで、民族紛争が起こると、彼は紛争地域へと戻って行く事になる。
この2人の運命も、当然歴史の渦に巻き込まれる事になるのだが、ジェマとディエゴの2人の生活を通して、民族紛争や、子供が産めない妻の想いや、2人の関係、そして代理母の問題へと様々な要素を含みながら、この映画は、夫婦。親子・血縁問題・家族・愛・民族等様々な問題をじっくりと考えさせられた。
そしてラストがスゴイ!
また、ジェマの夫であるディエゴを演じているエミール・ハーシュと言えば、ショーン・ペン監督の「イントィザワイルド」で痛烈な印象を観客に植え付けた若手実力派俳優だ。
そして、そしてジェマの旧友詩人のゴイゴを演じたアドナン・ハスコビッチは、ジェマの息子ピエトロを演じたピエトロ・カステリットと僅か7歳違いだが、親子程の年齢差のある役を演じている。
ジェマとディエゴの担当医を演じているのはフランスの名優ジェーン・バーキンと言う事も大きな魅力の一つだ。
この作品で、静かな感動の涙に包まれるのも、これからの季節には良いのではないだろうか?
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