「ツッコミどころは多いものの、十分に楽しめた」黒執事 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
ツッコミどころは多いものの、十分に楽しめた
正直あんまり期待していなかったんですけど、「漫画原作の実写映画」は定期的に鑑賞することにしていたので公開から7年も経って今更ながら鑑賞しました。
原作漫画は5巻くらいまで読んだことがある程度の事前知識です。ただ、原作とは世界観もストーリーも全く異なるので原作読んだところで劇場版の理解が深まるとかそういうことは全くなく、むしろ原作のイメージが頭にある故に先入観を持って映画を観てしまったので、中盤まで剛力彩芽演じる主人公が男だと思い込んでました。
結論ですが、意外と悪くなかったです。期待しないで観ていたというハードルの低さもあるとは思いますが、水嶋ヒロは仮面ライダー出身俳優だからかアクションシーンはしっかりしていてカッコよかったです。ストーリーも原作ほぼ無視した内容故に映画尺に合わせて脚本が作られていた印象で、漫画原作の実写映画あるあるの「原作を映画尺に収めるためにストーリーが切り貼りされて分かりづらくてつまらない」ということは感じませんでした。
ただもちろん全面的に良かったかと言われれば全くそういうことはなく、終盤の展開が顕著ですがツッコミどころがあまりに多すぎて気になりました。要らないシーンや展開が多くて、続編作ることも視野に作ってるんだろうなというのが透けて見えてちょっと冷めました。
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女王の密命により暗躍し、難事件を秘密裏に解決してきたファントムハイヴ家の末裔である幻蜂清玄(剛力彩芽)は、悪魔の執事であるセバスチャン(水嶋ヒロ)と契約を交わし、両親を殺害した犯人に復讐するために事件を追っていた。外交官らが次々にミイラになって死亡するという奇妙な事件を解決するよう女王より密命を受け、調査を開始するのであった。
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冒頭から思うことですが、世界観が全く分かりません。
原作漫画は中世を舞台にした作品です。しかし本作は現代の日本を舞台にしています。冒頭から現代が舞台だと分かるようなビル群が描写されますが、かと思えば主人公の幻蜂清玄が住む屋敷は中世の城を思わせるデザインだったり、空中に映像が映し出される近未来的な描写があったり、かと思えば各国要人が連続怪死事件を恐れて「悪魔祓いの祭典を開く」という前時代的なことをしてみたり。物語の舞台は現代なのか過去なのか未来なのか全く理解できない。それ故に原作漫画ではすんなり飲み込むことができた「黒魔術」とか「悪魔」みたいなファンタジー設定が全然入ってこない。物語に全然入り込めない。現代を舞台にしているのなら、そこは貫くべきでした。中途半端に原作の中世ヨーロッパ的な雰囲気を入れるべきではなかったと思います。
そして終盤のどんでん返しや伏線があまりに杜撰。
「解毒剤に見せかけて毒薬でした」とか、相手の裏の裏の裏の裏をかいて云々みたいな展開があまりに多い。回りくどくて「それ絶対成功しないだろ」って作戦を口裏合わせもなく成功させるのは違和感だらけでご都合主義的です。
あと、続編を匂わせる中途半端なラストだったのも不満でした。
結局清玄の両親を殺した黒幕の存在をほのめかしてエンディングだったので、私が映画に求める「綺麗に閉じた結末」では無かったように感じました。
ただ、上記のような不満点はありつつも、エンタメ映画としては十分に楽しめたと思います。オリジナルストーリーなので映画の尺に収まる内容になっていましたし、普通に面白いストーリーになっていたと感じました。
鑑賞前は剛力彩芽演じる主人公が原作と全く違ったので不安はあったのですが、意外にも普通に観ることができました。他のキャラクター(特に水嶋ヒロのセバスチャン)もほとんど原作通りのビジュアルで、演技も問題なかったように感じます。
食わず嫌いで観たことない方にはぜひ観てみてほしいですね。「原作とは別物」ということを念頭に置いて鑑賞すれば、原作ファンでもそこそこ楽しめる内容になっていたと思います。