セレステ∞ジェシー : 映画評論・批評
2013年5月14日更新
2013年5月25日よりシネクイントほかにてロードショー
いまどき大人女子の高慢と偏見を描いた恋愛ドラマ
ハーバード大卒の才媛にしてトレンド発信者の注目女優と言われても、まだまだ日本での知名度は低いラシダ・ジョーンズ。そんな彼女が脚本と製作総指揮もつとめているので、セレブのお嬢様がお友達と撮った雰囲気お洒落映画と侮る人も多いだろうが、これはいまどき大人女子の高慢と偏見を見事にとらえた傑作。
タイトルには2人の名前が並記されていても、描かれるのはジェシーを“親友”という名の“都合のいい男”にしていたセレステの物語。売れないアーティストである夫には自分が必要という自信のもと、すべてを自分の基準で進めていたセレステが、ジェシーと離れて初めて、いかに彼の存在が大きかったかを知る。ラブストーリーの王道パターンではあるけれど、語り口が実に軽快。永遠に親友でいられるはずだったジェシーとの関係の予期せぬ変化に動揺するセレステが、どんどん妙なハイテンションになっていったり、などなど……。共同脚本のラシダとウィル・マコーマックの実体験も多分に反映されているというカップルの紆余曲折は、笑いを交えて描かれる心の機微がリアルで繊細なのだ。
とりわけ、パートナーシップに限らず、順番待ちの列でも自分の基準で他者を支配したがるセレステのエピソードを使って、紆余曲折を経た彼女の成長を見せるさりげなさ。滑稽で、せつなくて、そして最後は晴れがましい。スノッブな世界の人々を洗練されたスタイルで描きながら、スノッブに陥らなかったスタッフ&キャストのセンスと才能にはただただテンションが上がるばかり。セレブお嬢様への先入観は吹き飛んで、これからはラシダやリー・トランド・クリーガーの名前を見かけたらチェックせずにいられなくなるはず。
(杉谷伸子)