劇場公開日 2013年10月19日

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「この映画を観ないで、今年の映画は語れない!最高に面白い拾い物だ」危険なプロット Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5この映画を観ないで、今年の映画は語れない!最高に面白い拾い物だ

2013年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

映画や芝居、文学好きは勿論の事、音楽好きの人も含めて、創作活動が大好きと言う人達には、絶対に必見の映画だと思う。特に音楽が効果的に使われていると言う気はしないが、自己のイメージの世界観を表現していくと言うプロセスを非常に巧みに見せてくれている作品であり素晴らし出来の映画だと思う。105分があっと言う間だった。
しかし本作は、私の住む神奈川県内の一部のシネコンでも上映されていたが、この作品の上映も、あっと言う間に終了してしまった事は残念だ。

この作品は、この予想出来ないラスト、作品の主人公である国語教師ジェルマンが教え子のクロード・ガルシアの文才に心を奪われ、翻弄されていくように、私の心も、観客の心も、このクロードの罠に徐々にハマってしまうが、それが快感でたまらない!
しかし、どうしてこんなに面白い作品が、多くの劇場で観られないのか、日本の映画配給業界事情がどうなっているのか、疑問に思うと同時にちょっぴり怒りを憶えた。
ハリウッドの、つまらない映画が幅を利かせているシネコン主流の上映システムの中で、こうしたヨーロッパを始め、その他の国々で制作された作品の中には数々の秀作が有るが、それら秀作の多くは、作品の存在自体を知られないままに、上映が終了し、レンタル化も遅くなり、ついには忘れ去られ、お蔵入りして、朽ち果ててしまう映画も多い。非常に勿体無い事だ。

本作は特に文学のストーリー展開の仕方、映画も同様だが、物語がどの様に組み立てられていくのか?その基本が次々と映画の中で明かされていく。その中で「バタフライエフェクト」の様に一つの出来事の後に起こる、次なる展開の幾通りもの可能性の枠がどう変化する可能性があるのか?その展開が面白くなっていくプロットとは如何なる物なのか、こんなにワクワクする映画も、中々ないと思う。
日本でもフランソワ・オゾン監督は人気が高いと言うけれど、普段フランス映画をあまり観ない私は、彼の作品は「スイミング・プール」「ぼくを葬る」の2本しか観ていなかった。
だが、この「危険なプロット」を観て、私もオゾン監督の大ファンに仲間入りした。
早々「しあわせの雨傘」「Rickyリッキー」など彼の他の作品も観てみようと思う。

本作は、オゾン監督がスペインの戯曲をフランスの高校に舞台を移し、そしてラストシーンも監督独自のアイディアで展開を変更してこの作品を仕上げていると言う。
観客の予想出来なかったラストシーンと言う事では、本当に見事なラストだった。正に「危険なプロット」そのものだった。
本作は先が全く読めない展開、と言う事で、サスペンス映画の面白さの要素が有り、しかもフランス映画ならではの、画面から適度に醸し出される仄かな色気を漂わせて観客の心を見事に物語の中へと招き入れて行くオゾン監督の演出はお見事だ。
流石は、映画の本場のフランスだ、こう言う面白い作品が出て来るのだよね。
それはまるで、主人公のルキーニ演じる国語教師のジェルマンが次第にクロード・ガルシア少年の才気溢れる小説の世界へとのめり込み、翻弄されて、現実と虚構の狭間で完全に溺れて行く様に似ている。
この映画を観ていると、何処となく、ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」を想い起こしてしまう。
クロード役のエルンスト・ウンハウワーと言う新人俳優はこの作品でリュミエール男優新人賞を獲得したと言うが、今後が楽しみな俳優だね。そう言えば、何処か彼はビィヨン・アンドレセンの様な妖しい色気も漂っていた気もする。

クロードが書いた作文の読み上げセリフが軸になって映画が展開していくので、基本セリフが多い為に、沢山出る字幕を読むのが苦手な人、例えばウディ・アレン監督作品のようにセリフの多い作品が苦手なタイプの映画ファンには向いていないかも知れないが、このオゾン監督は、フランスのウディ・アレンと言うところかな?
私はアレン監督も同様好きなので、最高に楽しめる映画でした。

ryuu topiann