危険なプロットのレビュー・感想・評価
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審美眼
最前列でありながら一歩離れて眺める人間模様は、特権意識を増幅させる。
けれどその人生に何の彩りが齎されるだろうか。
文学的な
現実と虚構の境目が徐々に曖昧になっていく様が面白い。決して劇的ではなく、じわじわと読み手を侵食していく感じ。
クロードの内面描写を極力抑える事で彼の妖しさも旨く演出できている。
静かな夜にワインでも飲みながら観たい作品。
邦題好き
最後は、二人ともいろんなものを失ってるのに、とても爽やか。クロードは学校を辞めたし、先生は仕事も奥さんも失った。それでも二人とも生き生きとしている。クロードは家庭教師が本当天職って感じ。この描き方はすごい。
クロードにはいつか小説を出版して成功してほしい。あと更生してほしい(少しだけでいいからまともになってほしい)
あと仏語学習者にとっては、聞き取りやすくてすごく勉強になる。
フランソワオゾンの作品の中で一番好きかも。
上品な変態映画
高校の国語教師の仕事に嫌気がさしていたジェルマンは、一人の生徒クロードの作文に文才を感じ、個人指導をするようになるが…。
鬼才フランソワ・オゾンによるサスペンス。
巧みな語り口に引き込まれてしまうが、客観的によくよく考えてみれば、なかなかの変態映画でもある。
クロードの作文は、平凡な同級生の平凡な家庭に入り、そこで見聞きした平凡な生活の様子をまるで一つの物語のように事細かに書いたもの。
盗み見、盗み聞き、いやいや、盗み書きといった所。
時には皮肉めいて侮辱したり。
言葉選びや文法など最もな指導をしているようで、実は他人の家の様子が面白くて堪らないジェルマン。
やがてクロードは、欲求不満そうな魅力的な同級生の母親によこしまな感情や欲望を抱くようになり…。
作文として書いているので全て実体験なのだろうが、本当にそうか妄想か、劇中のジェルマン同様翻弄させられる。
作文を使って他人をコントロールしていたかのようなジェルマン。
が、実際にコントロールしていたのは、クロードの方かもしれない。
全てはシナリオ通り…のようなジェルマンの身の破滅。
美しい顔立ちながら意図が読みにくいクロード役の青年の佇まいが印象的。
“続く”とは他人を捉えて離さない魔法の言葉。
個人的にびっくりしたオチが。
ラストのジェルマン、あまりの変わりように最初誰だか分からなかった!
あの、すみません。 宮藤官九郎さんもフランソワ・オゾンも、言いたいことは同じだと思います(多分)
・退屈な中流家庭も感性豊かな美しい少年(エルンスト・ウンハウアー)の目を通せば、こんなに官能的で緊張感のあるサスペンスになるってのが、オゾンの「危険なプロット」です。
・退屈な団地の日常も、頭の中はエッチな妄想で一杯な中学生の円山(平岡拓真くん)の目を通せば、こんなに下品で面白いサスペンスになるってのが、クドカンの「中学生円山」です。
・凡人教師(ファブリス・ルキーニ)が身の程をわきまえず、才能ある美少年を指導して中流家庭をモデルにした妄想小説を書かせるのが「危険なプロット」です。
・邪悪な目をした団地の正義を司る男(草彅 剛くん)が、エッチなことで頭が一杯な円山の妄想を褒め称え、最終的にヒーローへと昇華させるのが「中学生円山」です。
・妄想が現実を越えた時、破滅を向かえるのが「危険なプロット」です。
・妄想が現実を越えた時、あるモノに舌が届くのが「中学生円山」です。
なんやねん!
円山の到達感に、全く共感できません!
でも届いたのはモノだけではなく、過去の悲しい事件にも。
円山の「あるモノに届く為の毎日の鍛錬」と奇妙な妄想、点在する一見すると意味がなさそうな出来事が最終的に一つに纏まる「中学生円山」です。そいうとこ、伊坂幸太郎先生的です、多分。
子供が夢見るヒーローって、つまり正しい大人の象徴なんですよね。
つよぽん演じる下井は妄想を上手くコントロールして、円山を正しく導いていた。クドカン、ちょっと綺麗に纏めすぎ!
けれど、円山の父役、中村トオルさん格好いいなぁ-。
ビーバップの時に、中村トオルさんの魅力に気付けなかった自分を、30年近く責めています。
そんな反省にて、以上です。
16歳の少年の週末が、たった2行だ
映画「危険なプロット」(フランソワ・オゾン監督)から。
主人公は、文才溢れる少年と国語教師なのだが、
私は、他の子どもたちの「文章能力」が気になった。
冒頭で、子どもたちに求めた「週末を出来事」を書かせる宿題、
嘆いていたのは、その内容だった。
「土曜、ピザを食べテレビを見た。日曜、疲れて何もしなかった」
この内容に、教師が溜息をつきながら、
「16歳の少年の週末が、たった2行だ」と吐き捨てるように言う。
「土曜、テレビ・ピザ。日曜、何も。詩を書けとは言ってない。
週末の出来事だ。それなのに、2行以上の文章を書けない。
彼らの無知より、将来が心配だよ。子供は『未来』だ。」
メール全盛の現代、単語はなるべく少なく、文も短い。
形容詞と呼ばれる表現は、ほとんど皆無。
皆が時間に追われ、用件のみを伝えることが是とされる昨今、
これが普通なのかもしれないが、なんだか味気ない。
少なくとも「嬉しい」とか「楽しい」、「悲しい」といった
感情表現が無くなってきたことが、心配である。
ストーリーとは全く違った部分に反応してしまったが、
これもまた、この作品を通して感じたことだから、
「16歳の少年の週末が、たった2行だ」を残しておきたい。
二人を翻弄する“危険なプロット”
最初に書いておくと、最近のフランソワ・オゾンの作品の中では抜群に面白かったし、少なくとも私は好きだった。
序盤を観ていると、小説の道を諦めた中年男の文学教師ジェルマンが、碌に文章も書けない“蛮族”の如き生徒の中で、才能の片鱗を感じさせる生徒クロードに出会い、運命を狂わされるという「ベニスに死す」的な展開を想像してしまうが、今作はそう単純ではないところに面白さがある。
宿題の課題“週末の出来事”が、文字通り“危険なプロット”となり、まさに現実が先か?小説が先か?虚実ないまぜに動き始める。二人はこのプロットに翻弄されるのだ。
本当は欲しかったのかどうかはともかくも、子供のいないジェルマンと身体の不自由な父親とはいわゆる普通の親子関係が逆転しているクロードの関係を擬似親子と見ることも出来るかもしれないが、
二人の関係は決して一方的なものではなく、言ってみれば、作家と編集者、共犯関係になっていく。
オゾン作品の主人公としては珍しい中年男。悲観論者で皮肉屋のジェルマンを演じたファブリス・ルキーニ(コメディ要素控えめのウディ・アレン!)がいい味を出しているし、ジェルマンの妻ジャンヌのクリスティン・スコット・トーマス(ダイアン・キートンあるいはミア・ファロー)との掛け合いも絶妙で楽しかった。
面白かった
普通の高校生や一般家庭の話なのにすごくスリリングで、題材はどこにでも転がっていて視点ひとつでこんなにも面白くなることを改めて気づかされた。
途中で作文がフィクションになっているのか、映像描写がフィクションになっているのか、現実の境界があいまいになるところがすごく面白かった。
少年の身の上を思うと気の毒になる。数学の教師なんて中卒ではかなりダメなので学校やめたらダメだと思った。
主人公の先生は、元作家志望なのに、ダメ出しばっかりして小説の先生としてもあまりよくなかった。最初は描くだけでも相当なモチベーションが必要なので伸び伸びと描かせてあげて、あとから修正した方がいい。でもこんなことを気にして守っていたら映画としては全然面白くないのだ。
ハラハラする!
どこからどこまでが本当のことなのか、凄くハラハラします!
主人公の男の子が綺麗で魅力的で危ない感じがいいです。
のめり込んでしまう教師も、段々とエスカレートして…。
最後、先生は死んでしまったのかと思いましたが、そうではなくて安心しました。
最後のレズビアン設定で話していた少年の捏造話も気になりますwww
「つづく」という台詞がとても印象に残ります。
久しぶりのフランス映画
ずる賢い嫌味な男といった役どころの多かったファブリス・ルキーニも初老の役。高校教師である彼は教え子の男子生徒の一人に作文指導を始める。この美少年が次第に暴走をして、友人の美しい母親(エマニュエル・セニエ!!歳を重ねてなお妖艶。)へ迫る。自分が子供のころに、こんな風に友達の母親に興味を持ったことがあるだろうか?おそらく私の生まれ育った文化には、女性が年齢を重ねていくことで身に着けていく魅力というものが、あまり評価されないのだろう。しかし、フランスの文化にはそうした価値観が存在する。だから、高校生が友人の母親に性的な魅力を感じることは、困ったことではあるが不自然なことではないのだろう。
久しぶりにフランス映画らしいフランス映画を観た。やはりこの国の映画はまだ死んではいない。危機的な状況であることに変わりないと思うが。もっと日本でも公開本数を増やして欲しい。
“続く”の魔力に魅せられます
常々より、映画はの良し悪しを決めるのは、シナリオ、演出、そして役者の順だと思っているが、久々に三拍子揃った秀作だと思う。
舞台はフランスの高校。元、作家志望の高校教師が、添削中の作文の一つに心惹かれる。その文章のラストは、“続く”。彼に文才を感じた主人公ジェルマンは、特別授業と銘打って物語の続きを求めていくが、いつしか主従の立場が逆転してゆくという心理サスペンス。
クロードが華奢な肢体に制服を身に付けてゆく冒頭シーン。制服という呪縛と、未成熟な少年の危うさを暗示させる絶妙な始まりだ。さらに、クロードの人格を深く描かないことで、あくまで主人公の好奇心の目(フィルター)とし、ひいては、私たち観客も同じ視点へぐいぐいとはまり込ませる巧みさ。ラストの結末まで一気に引き込まれる。
クロード役のエルストンの控え目でいて、存在感ある演技、その目力。今後が楽しみです!
まさに危険なプロット!!
間違いなく、エルンスト・ウンハウワー(クロード役)の虜に。
彼の色目で脳みそがとろけそう
物語が進んでいくごとにクロードが紡ぎだすストーリーの中に引き込まれ、いつしか現実とフィクションの間にある混乱に取り込まれていく。
それは、魅力的な文学と出会ったとき、ページをめくる手が止められなくなるのと同じ。
ほんの数秒先の展開すら待ち焦がれるようになり、物語から目が離せなくなっていく。
創造するとはどういうことか、観客であるとはどういうことなのか、その魔力と本質について。
続きが気になる
怪しげでどこか危険な香りを漂わせる美少年…キャスティングが最高でした!彼の続くにどんどん引き込まれていくジェノマンの気持ちがよくわかります!しかし…どこかシリアスにならないのはラファのおかげでしょうか笑
小説の続きを書くために
だんだんと悪趣味へと変わっていき攻守が変わるのがいいね。
家庭を壊すそれがなんだか興奮する。
もっと過激な展開を期待してたりもあったけど。
覗き見の誘惑。
「続く…」の魔力、若しくは背徳の禁断の中毒性。
ミイラ取りがいつの間にかミイラになる、攻守の切り替えの上手さ。
物語が現実を浸食し、夢か誠か…境界のあやふやになる不安を煽る演出はさすがオゾン監督。
クロード役のエルンスト・ウンハウアー氏、今後注目です。
二人の女性に共感そして憧れる
スキマ時間にふらっと立ち寄った。
少年の視点で綴る「普通」の家庭の出来事について、気づけば少年の視点なのか、それを読む夫婦の視点なのか、我々観客が期待する視点なのか…といったことを考えながら観ていた。
いかにも理想的な夫と息子に恵まれ、息子の友達からも性の対象にされるエステルは間違いなく幸せな女性像のひとつだろう。一方で、家庭以外にも居場所があり、自分の服は自分の金で買います(多分)、そんなジャンヌにも憧れる。
この映画のひとつの見方として、インテリアや食べているもの、洋服やアクセサリーなどに注目して参考にしてみるのもまた一興かと思う。
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