二重生活(2012)のレビュー・感想・評価
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女たちの三国志
二人の女とそれぞれに子供をもうけて、二つの家庭生活を送る一人の男。この先一体どちらを選び取るつもりなのか。それともこのまま両方を続けるのか。もしかしてあるいは、両方ともうんざりして放り出してしまうのか。たぶん本人にも本当はどうしたいのか決められないのだろう。
なぜなら、この男は二つの家庭とそのそれぞれのパートナーにのみ貞節を尽くしてはいない。この二人とは別の、他の若い女とも一時の情事を楽しむこともあるのだから。
おそらく自分の意志でどちらかを選び取ることはなかっただろう。その選択を合理的に行うための便利な理屈などあるはずはないのだし、またその必要に迫られている訳でもないからだ。少なくとも経済的には。
ところが、この第三の女と男の関係を愛人が知った時、この4人の関係は思わぬかたちで結末へと動き始める。
表面上は本妻がその地位と知略によって主導権を握っていくかに見える。しかし、実のところ事態は愛人側の目論見通りに運んでいくのである。本妻の怒りに火を付け見境を失わせた愛人は、自分以外の二人の女をもろともに男から遠ざけることに成功する。そして、最期には自分が本妻へと収まるのだ。なんとも恐ろしい女である。
さすが、「漁夫の利」の言葉を生んだ国。軍師諸葛亮孔明も舌を巻く計略ではないか。
しかも、この計略はこれで終わりではないのだ。この女は、夫となったその男に、自分だけが目撃者となる大きな罪を犯させる。女の沈黙こそが、男と女と子供の三人のつましい生活が続いていくことの必要条件となったのだ。この男にはもはやなんの選択の余地も残されてはいない。窮して猫を噛む鼠にもなれないのだった。
目蓋に焼きつく微笑み
なんて艶やかに彼女たちは微笑するんだろう。心ここに在らずの男の傍ら、しあわせであるように、かたや詰問する男たちを前に、静かに強く。
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