パリ、ただよう花 : 映画評論・批評
2013年12月17日更新
2013年12月21日よりアップリンク、新宿K's cinemaほかにてロードショー
パリの街中でひとり佇む中国人女性の孤独と哀惜
正しいことを言えば正しく生きられるわけではない。心に思っていることをさらけ出せば他人と本当の付き合いが出来るわけではない。愛し合うことが愛を育むとは限らない。そんな人生の複雑さを前にして、私たちはなす術もない。だからこうやって映画を観たり本を読んだりしながら他人の人生を覗き観て、自らの生きる糧にすることになるのだろう。
だからといってその「糧」が糧になるかどうかはその場になってみなければ分からないわけだから、人はいつも同じ過ちを繰り返すわけだ。もちろんそれは、他者の目から見れば「過ち」と映るかもしれない。しかし当事者にとってみたらそれは常に懸命の、生きるための、切実な選択の結果でもある。それをどう受け入れるか。そこに「愛」が賭けられているのだろう。
北京とパリを行き来する28歳の女性を主人公にしたこの男女間の恋愛、性愛、友愛の物語は、観客の目から見たらおそらく「過ち」の連続ということになるだろう。映画を観ながら、焦燥、困惑、怒りといったネガティブな感情に押しつぶされることになるかもしれない。しかもその果ての祝福が待っているわけではなく、主人公はパリの街の中でひとり佇むばかりである。その孤独と哀惜の感情を、共有することができるかどうか。彼女の隣に寄り添えるかどうか。観客それぞれが、それぞれの関係を彼女と結ぶことになるだろう。もちろんこの映画は、ひたすら彼女のそばにあり続ける。
(樋口泰人)