劇場公開日 2013年5月31日

「50分弱に凝縮した映像美が際立つ一作」言の葉の庭 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.050分弱に凝縮した映像美が際立つ一作

2024年4月7日
PCから投稿

本作の3年後に『君の名は。』(2016)で知名度を飛躍的に高めることになる、新海誠監督の短編映画。

スタッフの顔ぶれなどを見ると、この頃からすでに、『君の名は。』に至る道筋ができていたことに気が付きます。『秒速5センチメートル』(2007)と同様、短い時間に凝縮した美しい映像を堪能する作品、と言っても過言ではないでしょう。

旅要素もあり、雪景色の寒々とした雰囲気もあった『秒速5センチメートル』と比較すると、公園を基点に時間が積み重なっていく構成の本作では、やはり際立つのは木の葉と、そこに差し込む光、あるいは波紋の広がる水面など、きめ細かな自然描写です。

物語としてはものすごく興奮するような場面があるわけではなく、むしろタカオ(入野自由)とユキノ(花澤香菜)の、距離感を探りながら交流を重ねていく過程を静かに描いています。したがって本作には、時空を超えたり世界を救う鍵になったりといった、超絶的な展開はないけど、物語が設定上の複雑さ、重厚さを増していく以前の、とにかく自分が描きたい描写に全力集中した感のある新海誠作品として、本作は鑑賞する価値が十二分にあるでしょう。

2024年になって、新海監督の初期長編、『雲のむこう、約束の場所』(2004)が再上映されるんですよね。この機会に、本作も再上映してくれないかな…。

yui