「対立勢力に属する男女の恋の話」ウォーム・ボディーズ くりあさんの映画レビュー(感想・評価)
対立勢力に属する男女の恋の話
「敵対する勢力に属する若い男女が恋をする」という、いわゆるロミオとジュリエットの形式(ただしハッピーエンド)の話です。
敵対する勢力の設定として、ゾンビと人間というのを見持ってきたのが斬新。
以上。
いやほんとに。その斬新さが全て。
ゾンビは徘徊するし人を襲って食うし死んでるから死なないけど、これスプラッタ映画ではないし、そもそもホラーですらないから。
ゾンビとはいかようなものかの新解釈はなかなか面白い。
実は思考能力があって、それなりに考えてコミュニケーションをとっているというのはありそうでなかなかなかったアイデア。
ゾンビがなぜ脳を食うのか、その答えとストーリーが融和してるのも大変良い。
だけど、断片だけの発話のはずが割と初期からまともな会話してたり、他のゾンビも音楽や収集行動してねぐらを決めてるのかとか、車あるならその足でさっさと逃げろよとか、傷ついた体は最後どうなるのかとか、ガイコツはガイコツで組織的行動とってたりとか、唐突に暖かいとか言い出したりとか、変なところがいろいろあるのだ。
でもまあ、ゾンビというのは単なる「対立する勢力」の置き換えなので、少なくない突っ込みどころも目をつぶるのが正解だろう。
抱擁シーンでキスしつつそのまま食いだしたら話が破綻するしね……。
で、この設定と解釈の斬新さをのぞいてしまうと、冒頭にも書いた「ハッピーエンドのロミオとジュリエット」以上でも以下でもない。
ああ、こう解釈してこう処理するんだーと感心するものの、それは映画の楽しみ方としてどうなのという。
設定の斬新さをメインストーリーに上手く融合させた処理の上手さで☆4……といきたいところだけど、メインストーリーに関係なくフォーカスあたってないゾンビ要素の投げっぷりが、さすがに無視できないぐらい多すぎるので☆3.5。
一風変わった恋愛ものを見たい人にはオススメ。
(個人的ベストショットは、ゾンビの顔色の悪さをごまかすためのシーン。女の子の生き生きとした表情が素敵。BGMのイントロで劇場内からくすくす笑いが……)