「ドラッグに依存する社会の闇」サイド・エフェクト arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラッグに依存する社会の闇
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収監された夫に面会する姿は貞淑な妻そのもの、しかし、出所した夫を迎えた彼女は、夫の全てに幻滅しているように見える。
ルーニー・マーラ演じるエミリーの視線の行方、表情のひとつひとつが不穏な空気を醸し出しているが、それが終盤への伏線にもなっている。
一見、抗鬱薬の副作用、製薬企業、医師の倫理といった現代社会の闇を暴く社会派の作品。しかし、エミリーに夢遊病の副作用を伴う抗鬱薬を処方した責任を問われ、仕事も家族も失いつつある医師バンクスが、エミリーの行動を不信感を抱き、真相解明に乗り出すあたりから、個人の隠れされた欲望、心の闇に迫るストーリーへと変貌する。
それにしても、うつ病ひとつに何種類もの薬が存在し、当たり前のように薬を服用し依存するアメリカ社会の現状に驚く。
それは、“うつ病”が如何に儲かる病気か、多くの人々が悩む現代病であることのあらわれだろう。
貞淑な人妻とモラルを失った傲慢な女という一人の人間の中に存在する二人の女を演じ分けたルーニー・マーラ、たまたま診察を担当したばかりに仕事も家族も失いそうになるも一転反撃に出る強かさも併せ持つバンクスを演じたジュード・ロウ、エミリーの魔性に魅入られ道を踏み外していくシーバート医師を演じたキャサリン・ゼダ=ジョーンズ。この三人の騙し合い、演技合戦が最大の見所。
一時的に薬で鬱状態が緩和されたとしても、鬱状態に陥った根本的な原因がなくなる訳ではない。
それは、夫さえいなくなれば全てがうまく行くと思い込んだエミリーの短絡的な考えの元になっているように思えた。
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