「「病気」と「異常」は別物。」サイド・エフェクト とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
「病気」と「異常」は別物。
偏見を助長しそうで不愉快 (ブチっ!!!)。
けれど、役者の演技と、娯楽作品としては堪能できます。
ん””” ジレンマ ( *´艸`)。
役者は熱演。すばらしかったです。
特に、ル―ニ―マーラーさんの壊れっぷりが凄かった。
「私は病気じゃない」って叫ぶけど、十分異常だよ。
薬の副作用がキーワードの話。
副作用による殺人。責は、処方した医者にあるのか、患者の病理にあるのか。製薬会社の陰謀…てな感じの宣伝につられて視聴。
副作用の問題、薬漬けになっているアメリカの精神医療に切り込んだ作品かと勘違いしてました。
違うじゃん!!!
『オーシャンズ11』でも見せた、幾つもの伏線が、縦糸横糸、絡み糸が思わぬ方向からより織られて一枚の作品になっていくところや、強引だけれど、これでもかと畳みかけ、息をもつかせぬ迫力で展開する演出 + 映像美はお見事!!と唸りたくなるし、鑑賞後は軽い興奮を覚えます。
でもね。
実際は(日本では)こんなふうにはならないと思うけどね。
罪が副作用もしくは病理に関係あるのかとなれば、裁判で本格的な精神鑑定が導入されるのではないか。本格的な精神鑑定をするなら複数の人(鑑定する精神科医と、テストを施行し解釈する心理士)が関わるし。その鑑定を元に裁判で検察側、弁護側が傍聴人、今なら裁判員も?を前に、時に主治医以外の専門家が呼び出されて、論戦繰り広げるし。場合によっては、検察・弁護双方から、それぞれが依頼した別の人が施行した精神鑑定が出てくる可能性もある。㊟1
となれば、これだけ世間の注目を集めている裁判ならば余計に、この映画のような展開にはならないと思うけど。
(㊟1:ラパスさん版リスベットの『ミレニアム3』では、リスベット側の弁護士が、検察側とは別の精神鑑定書を出そうとして、リスベットに拒否されて困っていたから、日本だけではないと思う)
入院だって、病棟から人権委員会(だっけ?)に電話かけられて、訴えられるし。日本では。
殺人でさえ、司法取引が成立する。怖い国ですね、USAは。
そして、裁判以外の点でも、エミリがクリニック以外に押しかけてくるようなら、単なる鬱ではなく違う病名が頭に浮かび、普通の精神科医なら治療方針を見直すと思うけどな。
さらに重要なのは、新薬を使うのなら、ちゃんと文献チェックしてから使うべきではないか。インターネットで出てくる程度(しかも新薬のHP!!!)もチェックしていないなんて、なんて医者だ。
困った副作用が続いている時点で同僚に相談もしていない(スパーヴィジョンやケースカンファレンスを受けていないし)。以前の主治医には相談には行っているけれど…。
周りの意見に耳を傾けることをしていなかったから、周りが離れていった?
自業自得じゃん。
製薬会社からのリベートや、処方した診療報酬で暮らして、ちゃらんぽらんに診察している傲慢精神科医ならあり得るけど、生真面目に治療に当っている医師とは思えない振る舞い。
社会現象にも関心持って、精神医療・薬剤会社の問題点を下書きにスリラー作ったつもりなのかもしれないけど、ちゃんとリサーチもせずに、アイデアだけで話を組み立てたようで不愉快。
なのに、エンターテイメントとして観ると面白いんですよね。役者の演技も見応えあるし。
(え?でもこれって、それこそ嘘を真実めいたもの見せかける手法にも繋がる…オーシャンズのように。それこそ、怖”””””!)
とりあえず☆2.5付けたけど、ジレンマの起こる映画です。