「全部ウソさ、そんなもんさ by 爆風ソダーバーグ」サイド・エフェクト mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
全部ウソさ、そんなもんさ by 爆風ソダーバーグ
映画の〈Side Effects〉とは、副作用のこと。
ソダーバーグ最後の劇場映画だと聞いていたけれど、その後も、しっかりメガホンを取っているみたいでちょっと安心しました。宮崎駿監督も何度も引退宣言しながら、映画作ってるし、そんな感じなのかな・・・? 映画レビューでもなんでもない話ですが。(^_^;)
この『サイドエフェクト』という話は、うつ病の患者(エミリー)が薬(抗うつ薬)の副作用(夢遊状態)で殺人を犯してしまい、その患者に薬を処方した医師(バンクス)に責任が問われ、バンクス医師がぼろぼろになっていくという、こわ〜いストーリー。しかし、最後は、バンクスの「倍返しだ!」みたいな展開になって、溜飲が下がります。
日本と比べると、アメリカでは精神科医にかかることは、風邪薬をもらうことぐらいに、「普通」らしいと聞いたことがあります。ソダーバーグは、そんな精神科医の実態と製薬会社のすすめる薬をひたすら処方するだけの医師と製薬会社の現状などをうまくからめてサスペンスを練り上げていて、さすがだなと思ってしまいます。
すごく面白いサスペンス・スリラーだったのですが、個人的に気になる点が2つあります。
一つは、現在使用されている薬が実名でバンバン使われていることです。
さすがに、殺人実行の元となった、抗うつ剤「アブリクサ」においては、後で調べたら仮名のようでしたが、ゾロフト、プロザックなどは現存する抗うつ剤のようです。
この映画を観た人の中には、「薬(抗うつ剤)って怖いわね」なんて思う人も多くいると思います。でも、実際に薬のおかげで病気が良くなった人も多くいるので、「薬=怖い」という偏見が生まれそうで危険な感じがしました。
もう一つは、薬の副作用であれ「殺人事件」が起きてしまったらならば、普通は「精神鑑定」が実施され、責任能力があるのかないのかが時間をかけて問われるはず。日本とアメリカでは違うのかな? 職権の乱用という言い方も変ですが、この映画では、バンクス独自の調査でエミリーの実態が暴かれていきます。(塩水でことんとエミリーは眠ってしまう)
以前に見た邦画『39 刑法第三十九条』を思い出しました。細かいストーリーはよく覚えてないのですが、無罪を勝ち取るために、多重人格者を演じて、結局、詐病であったという話だったような。(堤真一の怪演が印象に残っています)こちらは、刑法三十九条の是非が問われる作品だったと思いますが、詐病という点で今回の映画とかぶって、いろいろと考えてしまいました。
そんなわけで、★4つのところ、★3.5にしました。