劇場公開日 2014年7月25日

  • 予告編を見る

「大相撲ゴジラ場所」GODZILLA ゴジラ ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0大相撲ゴジラ場所

2014年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

ゴジラがスクリーンに登場したときに思わず拍手したくなるほどの興奮を覚えた。エメリッヒ版の「GODZILLA」とは違い、米軍からの攻撃にびくともしないその姿は確かにゴジラであった。スクリーンいっぱいに仁王立ちし、咆哮を挙げるその姿はまるで横綱のような風格があり、敵怪獣ムートーとの結びの一番ではがっぷり四つの闘いを見せてくれる。中でもゴジラが放射熱線を放つシーンは興奮必至だ!

しかし、何故今、ゴジラを作る必要があったのか?という疑問が晴れない。オリジナルの「ゴジラ」は核によって生み出された怪獣に町が破壊されるというところに科学へのアンチテーゼが込められていた。これは1作目に留まらず「ゴジラ対へドラ」では環境問題、「ゴジラVSビオランテ」ではバイオテクノロジーへの警鐘や懸念が込められていた。ある意味でゴジラ映画は科学や社会を映す鏡なのだ。

今作には3.11を彷彿させる原発事故や広島の原爆のことを示すシーンが描かれている。にも関わらず、物語はそこに深く踏み込まない。オリジナル版の「ゴジラ」ではオキシジェンデストロイヤーという架空の兵器でゴジラを倒すのだが、今作では米軍は安易に核兵器を使おうとする。ここに日本とアメリカの作り手の意識の違いが見て取れる。

確かに日本のゴジラシリーズは途中から子ども向け映画にシフトし、敵怪獣と戦うだけのヒーロー映画となった時期があった。しかし、今作は決して子ども向けに作られたものではないだろう。ゴジラ映画に敵怪獣との闘いを期待する人には満足する出来ではあるが、オリジナルにあったような人知を越えた脅威=ゴジラの前に無力となる人類の絶望感や科学や社会への危機感などをもっと盛り込んでもらいたかった。

Ao-aO