「ゴジラと言う黙示録」GODZILLA ゴジラ 智哉さんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラと言う黙示録
アメリカにできて日本にできないこと。
映像表現は言わずもがな、物語の骨子に及ぶまで、ゴジラの復活はこの国の文化の終焉を暗示しているようで、感慨にふける半分、何とも言えない微妙な気分にさせられた。
放射能汚染や情報操作。隠蔽工作など、日本に対する風刺性と見られるメッセージを物語に組み込む粋な演出は、この国の政治に対する、正にアンチテーゼと言っても過言ではない。
そして、とにかく街を破壊しまくるゴジラとムトーの映像表現への金のかけ方は、日本人とアメリカ人の文化への意識の高さの隔たりを改めて思い知らされた次第。
そんな様々なジレンマをまざまざと見せ付けられる格好となった、米国産のゴジラ。
ちょっと太ってはいても、あの鳴き声で思いっきり咆哮するゴジラの姿にはやっぱりシビれたし、文句なしにカッコ良かった。
しかし、いや、だからこそ、逆上陸と言う生ぬるい比喩でゴジラの里帰り迎えて良いのだろうか?
おかえりなどと戯言を吐いて、その帰還をお茶で濁して良いのか?
これはゴジラの形をしたアメリカからの警鐘ではないのか。
ハッキリ言ってゴジラが日本で作れない事は大いなる恥だ。
ミニチュアを駆使した特殊撮影が、スケールで今回のゴジラを上回るとは到底思いにくいし、かと言って同じ土俵のCG技術では全く勝ち目がない。
今回のアメリカ版ゴジラの続編が制作される事も決まり、仮にそれが往年の昭和ゴジラや平成ゴジラの様に連綿とシリーズ化される事になるならば、それを眼にする世界中の子供達は、ゴジラが日本生まれの怪獣であると言う歴史を認識しないまま、アメリカの新たなヒーローとして潜在意識にとどめる恐れがある。
これは危惧を超えた文化的侵略ではないだろうか。