劇場公開日 2013年11月23日

「「偶像」に「感情」を注ぎ込んだ「生きている手応え」を感じさせる傑作」かぐや姫の物語 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「偶像」に「感情」を注ぎ込んだ「生きている手応え」を感じさせる傑作

2025年3月21日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

知的

2013年公開作品
高畑勲監督の遺作映画
俳優地井武男の遺作映画

監督と脚本は『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』『火垂るの墓(1988)』『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』『ホーホケキョとなりの山田くん』の高畑勲
脚本は他に『リトル・マエストラ』『メアリと魔女の花』『この道』『フォルトゥナの瞳』『銀河鉄道の父』の坂口理子

日本の古典のアニメ化
原作『竹取物語』は1000年以上の時を超えた不朽の名作
作者は『土佐日記』で有名な紀貫之説があるがその説は異論はあっても支持したい
車持皇子のモデルは『宇宙皇子』にも登場する時の権力者だった藤原不比等が有力であり紀貫之は彼と大変不仲だったらしい

絵が優しい
デジタルだが水彩画なような色使い
それにひきかえウマ娘とか全てにおいて真逆

「高貴」「高貴」と鼻につく
なにかといえば顔を真っ赤にして怒る
讃岐造(さぬきのみやつこ)こと翁の価値観である

奥ゆかしくお淑やかなイメージゆえに神秘的なかぐや姫も今作ではなにかと感情的である
ディズニーに絡んでいるためか
グローバリズムか
現代的か
現代的が必ずしも全てにおいて良いとは思わないし実際のところ良いわけがない(良かったら今の世の中もっと良くなきゃ辻褄が合わない)が今作のかぐや姫像はとても良い

十二単を次々と脱ぎ出し駆け抜ける鬼の形相
御門に背後から抱きつかれ姿を消しまた現れた時の厳しい表情
堪らない

野山を飛び回る姫と捨丸のシーンも良い

高畑淳子がハマっていた

石上中納言のあの落ち方では腰ではなく頭と首を痛めるのではないだろうか

月の世界から迎えにくるわけだが『阿弥陀来迎図』を参考にしたらしい
沢口靖子主演の『竹取物語』では大胆にもUFOだっだがあれはあれで良いのだが好みとしては高畑勲の方が良いかな
UFOではあまりにも場違いに感じる

声の配役
かぐや姫に朝倉あき
幼少期のかぐや姫に内田未来
育ての父の翁に地井武男(一部三宅裕司)
育ての母の媼に宮本信子
木地師の子どもたちのリーダー格で「捨丸兄ちゃん」と呼ばれ慕われる捨丸に高良健吾
かぐや姫の身の回りの世話をする侍女見習いの少女の女童に田畑智子
翁が姫の教育係として宮中から招いた女官の相模に高畑淳子
宮中の祭祀を担当する斎部氏の一人で翁が姫の名付けを頼んだ相手の斎部秋田に立川志の輔
姫が故郷の山に戻った時に出会った炭焼きの老人に仲代達也
姫に求婚する5人の公達の一人で「蓬莱の玉の枝」を求められ作らせた職人に金を払わなかった車持皇子に橋爪功
姫に求婚する5人の公達の一人で「仏の御石の鉢」を求められたのに対し蓮華草の花を持参した女泣かせの石作皇子に上川隆也
姫に求婚する5人の公達の一人で「火鼠の皮衣」を求められる肥満型の阿部右大臣に伊集院光
姫に求婚する5人の公達の一人で「龍の首の珠」を求められ筑紫の海に出るが嵐と荒波に巻き込まれ怯える大伴大納言に宇崎竜童
姫に求婚する5人の公達の一人で「燕の子安貝」を求められ燕の巣に近づいて取ろうとしたが落下し腰を強打したことで亡くなる石上中納言に古城環
石作皇子の正妻の北の方に朝丘雪路
御門に中村七之助
月の世界の女官に朝倉あき

野川新栄