劇場公開日 2013年7月20日

「何をもって生きるか」風立ちぬ 旅行に行きたい!さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何をもって生きるか

2013年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

 宮崎駿の作品にしては、えらくストレートな構成となっております。
千と千尋みたいな狂気じみたメタファーをちりばめることなく、もののけ姫みたいに哲学的なテーマを最終的に観客の判断に放り投げるってなこともやりません。深読みする必要はない作品です。

 なんか右からも左からも批判されとりますが、宮崎駿ってのはポルコロッソなんですから、政治的なレッテル貼り付けて批判するのはお門違いかと思いますね。

 美術設定はさすがのクオリティです。ブルーレイ出たらじっくり静止画で鑑賞したいところですね。

 構成がストレートな分、主人公のセリフ回しでの演出が多いです。
朴訥とした声がいい味出してます。
ぼそっと一言「ここは地獄ですか?」とか。

 主人公に共感できないってな批判もあるようですが、あの時代のエリートってものすごく優秀で、かつ、国に殉ずる覚悟も持ち合わせてましたから、飽食の時代の凡人が共感できるはずはありません。その眩さに目を細めるだけです。

 ヒロインは、完璧に宮崎駿の趣味です。理想形です。理想の恋愛像、結婚観を赤裸々に描写してます。観てるほうが赤面するほどストレートです。
わお、ナウシカがキスしとる。初夜て、お子様も観てるんやで・・・

 かくいう私、シニカルに鑑賞していた訳でなく、タイトルバック中に涙と鼻水でどろどろになった顔をなんとかせねばと鞄の中からタオルを引っ張り出してました。

 なんで泣いたのか?
それは宮崎駿の演出する美意識。生き方に対する美意識。
古典的で普遍的な美意識。
貧しき時代にあって、飽食の時代に失われようとしている美意識。
あこがれて、あこがれて、死ぬほどあこがれた生き方がそこにあります。

キャッチフレーズの「生きねば。」の前にこの言葉があるはずです。

「美意識を持って」生きねば。

旅行に行きたい!