「欲張りすぎた作品」風立ちぬ Keiさんの映画レビュー(感想・評価)
欲張りすぎた作品
映画を見て共感できなかった者です。ジブリをもう見たくなくなるくらい
怒りを感じました。
・大人な映画 ・文学的 ・傑作
どうしてこうなるのか理解できません。
古典小説・映画を通過してきた人ならば、ストーリーの薄さや
恋愛描写の陳腐さ、主人公のロボット化したような感情表現・・・。
ハーレクイーンのようにある筋書きにそってアルバイトが書いたような
小説や、好きなものだけとにかく詰め込みましたという同人誌を
見たような後味でした。
堀辰雄か、堀越二郎のどちらかに集中したストーリならまだしも
堀辰雄の世界をベースに、堀越二郎を無理やりくっつけたような
話にいささか怒りを覚えました。
菜穂子の描写も「男性の理想像の塊」としか思えない。
若い、きれい、従順、守ってあげたくなるような病気もち。
とくに病気で居候の身なのに、のんびりお散歩ときたところに
「???」でした。いくらお嬢様育ちでも、嫁に行った女性なら、
同じ母屋で働いている女性に気を遣いませんか?
結末も「まさかこのまま適当におわらせるんじゃ」と思ったそのとおりに
終わりました・・・
総じて「美しい」作品でしたが、美しいだけで
汗のにおいも、埃っぽさも、オイルのねばっこさも、血のにおいも感じられない。
自分は絶対にこの作品が文学的とは認めたくないです。
「必死になって生きて」
がメッセージなら、他の文学作品・映画作品にいいものが
たくさんあります。
高校の文学史掲載作品を読むだけでもこの映画より
はるかに「人が生きること」へのメッセージを受けとることが
できます。
☆2つにしたのは、風景の描写と、音楽が良かったこと。
その点はさすがだなあと思いました。
<追記>
公開から1週間経ち、いろいろ考えたことを少し追記します。
・大人不在の映画?
みんな味方、叱る人いない。唯一反抗したのは大人ではなく「少女」。
・最初から最後まで「Look at me」を主張する菜穂子
※これはあくまで一女性の感想としてみてください。作品中で少し不自然に思った点をいくつかピックアップ(ひねくれた考えかもしれませんが(^^;))
・女中にこともができたことをわざわざ二郎に告げる(二郎は興味のない話をわざわざしている?)→女中は恋愛対象外と言いたい?
・二郎と菜穂子の父が婚約について話をしてるときに割ってはいる →結核を理由に二郎との縁談を絶対に壊したくないエゴの現われ?
・結核なのに二郎と床を一緒にしたがる →仕事よりも自分だけをみてほしい
・黒川邸から突然いなくなる →結局仕事の方を優先した二郎への反抗。黒川婦人の「美しいところをだけみてほしかった」は外見のみならず、女のエゴの部分が出る前に去ったことを含めている?
・エンディングでの再登場 →飛行機が飛んだのは私が風をおこしたのよ、といいたい?
・・・総じてやっぱりここ、あそこを無理やりくっつけて解釈しようとしても
材料がいまいち手がかりがもやっとしててつかめないですね・・・
この作品の主人公を実在したのと違う名前にしたらよかったのかもしれない。実在する人物名だから現実の史実に囚われる。それでいてこれはファンタジー作品と言われると、夢オチの肩透かしをくらう。堀越二郎を見たかった人でがっかりした要因のひとつではないか。
(30代女性、既婚、会社員(ものづくりエンジニア経験あり)の感想です)