「二郎はスーパーマン」風立ちぬ tMoさんの映画レビュー(感想・評価)
二郎はスーパーマン
観終わったあとに妻が「二郎はジブリ作品のなかで一番かっこいい」と言ってました。
そりゃそうです、あんな完璧な人間がいたら男でも憧れてしまいますよ。
二郎のスーパーマンっぷり
<幼少期>
・いじめっ子を一本背負いで投げ飛ばす
・小学校中学年(?)のときにイタリア語の本を読む
<青年期>
・足をけがした女性を背負って震災直後の混乱した街を歩く
・有名企業に期待の秀才として入社
・屈強なドイツ人に臆することなく意見を述べる
・入社5年後、戦闘機の設計をまかされる
・上司、同僚、部下から慕われている
やさしくて、行動力があり、秀才、エンジニアとしての才能も十分、家柄は裕福、おまけに顔も並以上です。
そりゃ惚れないワケがありません。劇中でも菜穂子と女中さんが「白馬の王子さま」と言っていますが、その通りです。
挫折といえば、幼少期に視力が悪いことでパイロットになることを諦めたことと、初めて設計した戦闘機の失敗です。
戦闘機の失敗は大きな挫折だったでしょうが、避暑地で数日たてば見事に復活!成功のためのヒントまでひらめいて、会社にもどってきます。
映画を観終わって「すごく良い映画だった」「今までのジブリで1番だった」とは口が裂けても言えませんでした。
この数日どこかモヤモヤが残っていたのですが、ようやく考えがまとまりました。
二郎がスーパーマンすぎて共感できないんです。まったく“生き抜くこと”に苦労していない。
「生きねば」がこの映画のメインテーマ(メッセージ)なのかもしれませんが、とてもこの作品でそれを感じることができません。震災や戦争も二郎にとっては、別の国で起こっているできごとであり(そう僕には見えました)、本当に精一杯生きているのは、菜穂子であり、二郎がシベリアをあげようとした子たちであり、出稼ぎのために線路沿いを歩いていた人達ではないでしょうか。スーパーマンで今後も普通以上の生活をおくるであろう“生き抜くこと”の苦しさが感じられない二郎にはとても「生きねば」と言ってほしくありません。
それと映画の宣伝について。ジブリ映画って「笑ってこらえて」などバラエティで特集を組み、制作風景や作者の考えをあらかじめ伝えないと何も伝わらない作品だったでしょうか?
恐怖すら感じた関東大震災の描写や、空や雲、昔の日本の風景など映像はとてもきれいだと感じました。
声優キャストも、瀧本さんと國村さんらとてもすばらしい演技でした。
映画の感想は人それぞれで当然です。僕はこう思いました。