「興奮さめやらず」風立ちぬ Fさんの映画レビュー(感想・評価)
興奮さめやらず
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相手の事がお互いよく分からないまま、家の存続のための見合い結婚が当たり前な時代(健康な伴侶が期待された)、菜穂子は吐血後にたどり行く自らの運命を見極めながら、結核で病身の我が身を迎え入れてくれた、尊敬し慕う二郎に寄り添う。
終盤、二郎が悪い風の予感に注意がそがれ、試験機の着陸を見逃してしまう瞬間に、妻・菜穂子の絶命が示唆される。
尊敬するイタリア人・カプローニと続けられる夢と妄想の入り混じった邂逅の中で、零戦のパイロットは戻らなかった。国を滅ぼした。などといった言葉が、あっさり淡々と述べられる。
時代に能力を求められて躊躇う理由はない。それは今日の航空・宇宙、原子力に携わる技術者も同じで、二郎と同じく美しささえ見出すだろう。
二郎の最後の夢に現れる菜穂子の姿に、胸が苦しくなる。亡くした肉親と夢の中でしか再会を果たせない沈痛の日々を思い起こす。 夢から覚めた二郎の寂しさは いかばかりか。
牛が引く舗装されていない道、広がる緑と木造の家屋。劇中で語られる‘貧乏’だった日本の景色に終始見入った。
人の声を効果音にしてしまう、ジブリ美術館の短編に続く試みは、航空機に機械音ではない生の声で生命を吹き込む面白い仕上がりになっていた。
「トトロ」の糸井重里と同様、庵野秀明に期待されたアプローチや、瀧本美織を始め出演する俳優陣も良かった。
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