「パラサイトと比べると…」きっと、うまくいく ようじょさんの映画レビュー(感想・評価)
パラサイトと比べると…
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『パラサイト半地下の家族(以下パラサイト』と比較しながら観ると面白い。
どちらも成功、不成功の別が明確な格差社会を描いている(因みにインド、韓国ともに自殺者数が多い)。
しかしながら、ラストシーンにおいては、映画が違えば、あるいは国が違えば、ここまで異なる結末を迎えるのか、と考えずにはいられない。
『パラサイト』においては下層階級が上流階級を刺殺する展開で、概ね社会構造の告発、こんな社会だからこんな結末なんですというラストであった。上を向いて生を歩める希望は殆ど示されない。容易に解が見つからないのが逆に、格差の深刻さを物語る。
一方の『きっと、うまくいく』では、好きなことを追求したランチョーが社会に媚びて生きるチャトゥルを上回る成功を収めた。また、社会に媚びなかったラージュー、ファルハーンも望んだ通りの職につき幸せを得ている。この映画では、深刻な社会状況の告発以上に、社会に対するランチョー的アプローチ(好きに生きて、難あることには"All is well"と唱える)の肯定に重きが置かれている。個々の鑑賞者にアプローチを示すことで、個人の集合である社会に作用しようとしているのだろう。
そして、撮り方・表現方法(『パラサイト』の上下を意識させるカメラワーク、画面の中の嗅覚を意識させる「匂い」というキーワード/『きっと、うまくいく』のミュージカル)においても比較考察の余地は尽きないが、全て主題の相違に起因しているようだ。
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