「後味は悪い」凶悪 しそさんの映画レビュー(感想・評価)
後味は悪い
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狂気と直に触れあい事件の渦中の人となる作品とは違い、
どこか淡々としていて、
解体した死体を焼く様は美しくさえ見えるのは、
記者藤井のフィルターを通した世界であるからだろう。
安全な場所から傍観する者に、同じ現実を生きる池脇千鶴が
「楽しかったんでしょう?」と問うと、二重のバリアが破られて、
世界のただ中に放りこまれるような気分にさせられ、はっとする。
藤井の妻の立ち位置と視点こそ、この映画の最も面白いところだと思う。
そこにはいかないけれど、薄皮が剥がれると、どんな闇が飛び出すのかわからない。
保険金殺人の一家は紙一重のところにいる。
また、最初と最後の山田孝之とピエール滝の対比がすごい。
ぼんやもっさりしていた山田が徐々にぎらぎらとした眼差しになり、
滝は怒りや憎しみから解放され、涅槃の境地にいる。
生き埋めになる老人の姿を思えば、後味はすこぶる悪いが、
凶悪はもう一度観たくなる。
あと、藤井の上司役の村岡さんが好きです。
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