劇場公開日 2013年9月21日

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「これを凶悪と呼ばずして何を凶悪と呼ぶのか」凶悪 スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5これを凶悪と呼ばずして何を凶悪と呼ぶのか

2016年1月8日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

難しい

これが実話を基にした映画だと言うのだから驚きです。
勿論、多くの部分で脚色はされているのでしょうが、架空の話ではなく現実に起きている話だと考えると、身震いしちゃいますね。
単純に事件そのものだけを考えても、もし死刑囚が告発しなければ間違いなく闇に埋もれていた訳ですから、こう言った老人を食いものにした事件がおそらく山ほどあるのだと考えると、本当に恐ろしい限りです。

しかもその見せ方がまた凄まじかった。
まず分かり易い悪人2人の行動、そして演じたピエール瀧とリリー・フランキーの演技がとにかく強烈過ぎて、トラウマになりそうですよ、これは。
R15指定なんで、それなりにヤバいシーンはあるんだろうなと思ってはいましたが、想像を遥かに超えてました。
ヤクザだけにエグさが半端じゃない須藤の行動もさることながら、先生の面白がって茶化しながら人を殺すその様は、胸糞悪くて仕方なかった!
徐々にエスカレートしていくその姿、感覚が麻痺するって本当に怖いね・・・。

この2人の行動だけでも十分過ぎるぐらい凶悪だったのですが、それだけでは済まないのがこの映画の凄いところ。
凶悪とは無縁の、いわゆる普通に生きている人達も、一歩間違えれば凶悪と呼ばれる存在に成り得る、そう強く訴えかけてきているところに、思わず唸らされましたよ。
殺された老人達の家族、事件を追う記者、記者の家庭、司法の穴、いろんなところに凶悪に成り得る存在が潜んでいて、本当に恐ろしかったです。
自分はそんなことには無縁だ、そう思っていてもいつ自分が悪に染まるか分からない、それが世の中の怖いところなんですね・・・。

特に山田孝之演じる藤井記者と池脇千鶴演じる奥さんのやり取りが印象的。
奥さんの言葉が確信を突き過ぎていて、ズシリと来ました。
これからますます深刻化する高齢化社会、この映画のように人間が更なる凶悪な存在へと変貌しなければいいのですが・・・。
しかしピエール瀧、リリー・フランキーの演技が脳裏に焼き付いて離れない・・・凄すぎ!

スペランカー