「ミステリーというかスパイサスペンスの味付け」名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ) 長井 祥和さんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリーというかスパイサスペンスの味付け
夜だったこともあってか、子供連れはほとんど見られず、我が家
ぐらいのものである。だが、逆にそれは本作が大人の鑑賞にも耐
えられるものであることを示している。
本作ではイージス艦の機密をめぐるスパイ・サスペンスの作風で
一貫しており、本格ミステリを期待する向きには厳しいかもしれ
ない。だが、イージス艦上で起こる、イージス艦の機密をめぐる
諜報合戦は、ドタバタに陥らず、筋の運びにも無理がないため、
緊張感を保ったまま鑑賞ができる。伏線や布石が前半から多数ち
りばめられているのも今までのシリーズ通りである。
本作はイージス艦を舞台にするところもあり、エンドロールにで
てくる協力感謝名簿には海上自衛隊の市ヶ谷の広報や、海上保安
庁など錚々たる名前が並ぶ。時節柄狙って作ったのかどうかはわ
からないが、きな臭い日本周辺の海域にとっては絶好のタイミン
グの内容である。
もっとも、設定上無理では?と思う点も多々あり、CIC見学の途
中で緊急事態が発生した時は、見学ツアーの面々は速やかに退出
させられるはずだし、一般客が内部見学する際には仮にも国家機
密である以上は、写真付きの入艦証があってしかるべきで、別人
に成りすまして見学などあってはいけないと思うのだが・・・・
これは素人のいらぬ詮索なのだろうか。
毛利小五郎が眠りながら謎解きの口上を行う部分で、一体、いつ
になれば口が動いていないことに目暮警部は気づくのか、という
ことには慣れたとはいえ、イージス艦の部分がきちんとしていた
ため、逆にその点で違和感が残った。
シリーズでは最後のエンドロールで実写が使用されることが多い
が、今回はイージス艦(おそらくはあたご?)が登場し、本編の
手に汗握るラストの余韻を引きずったまま、国防に思いを致すこ
とができる。ただ、ちょっと子供にはそれらの部分は難しいかも
しれない。
封切初日 '13/04/20 ワーナーマイカルシネマ 新百合ヶ丘